Z1-LivornoS(V2)
2020年に販売開始した音工房Zの2wayスピーカーZ1-Livornoは完成品モデルV2に生まれ変わりました(キットは販売終了いたしました)。キット・完成品をあわせて販売以来620名を超えるユーザー様にご愛用いただいているスピーカーになります。
- ■音工房Zの求める音を形にするために、ゼロベースで開発した音工房オリジナルケブラーコーンウーファーZ-Livorno(ゼット-リボルノ)。
- ■6dB/octのネットワークでも破損の心配がいらない音工房Zオリジナル設計のツィーターZ-Asti(ゼット-アスティー)。
- ■ウーファーとツィーターオリジナル開発により、音質劣化の原因になるアッテネーターを取り除くことができました。活きの良い音を楽しめます。
- ■ダクトにはテーパーダクトを採用。ヌケのよい低音再生に寄与しています。
- ■フロントバフルはそれまでの30mmから45mm厚のタモの集成材に変更。点音源を意識した大きな面取りデザインを採用しました。
Z1-Livornoの開発1
何故小型2wayの開発にここまで時間がかかったか?
音工房Zで販売してきたスピーカーは定番で販売してきたマルチウエイスピーカーはZ800-FW168HRだけでした。Z800-FW168HRは開業してから間もない2012年に販売開始しましたがこれまでに完成品を込みにすると1426セット販売する大ヒット商品となり今なお売れ続けています。
Z800-FW168HRは最高級のスピーカーユニットを使って、安価にハイエンドスピーカーを自作するというコンセプトの商品です。そのため、価格はハイエンドの完成品を買うのを考えれば激安ですが、やはり自作キットと考えると高額な部類にはいります。
「安価なマルチウエイのスピーカーを欲しい」
「Z800-FW168HRの廉価版が欲しい」
というご要望は開業当初からございましたし、音工房Zのスタッフからも度々提案がありましたが、私は簡単に首を縦にふることができませんでした。理由は簡単でした。
小型で安価な2wayスピーカーは大手メーカーがしのぎを削る、スピーカー市場の超超激戦区だからです。大手メーカーが人件費の安い海外で大量生産した商品に打ち勝つのに、こちらも同様に安価なものを大量生産・販売するという方法で勝てるわけがありません。
ですので私はこれまで最も数的には販売されている「小型で安価な2wayスピーカー」というジャンルをあえて避け続けてきました。安いだけが取り柄の小型2wayスピーカーはライバルが多すぎる上に、厳しい価格競争に巻き込まれることが懸念されたからです。
今回私がこのジャンルのスピーカーで勝負に出る気持ちにさせてくれたのは、音工房Zが尊敬し、ライバルでもあると勝手に思っているスピーカーにコストパフォーマンス的に十分勝負できるものができたという自負を持つことができたからです。
Z1-Livornoの開発2
B&W805の凄さ
そのライバルとは↓です。
このスピーカーの凄さは一言で言えばクラシック、特にオーケストラのような複数の楽器が同時に鳴るようなシーンにめっぽう強いことです。音工房Zではよく試聴会でこちらのスピーカーを弊社のスピーカーの隣に並べ、バックロードとマルチウエイの比較などで聞いてもらう機会がこれまで何度もありました。お客様は様々なジャンルのソースをお持ちこみいただきます。
805はボーカル系やジャズ系、単発な楽器等では音にベールが一枚かぶったような、そして音の抜けが悪くこもったようにも聞こえる場合もあります。
しかし、オーケストラのような複数楽器が同時に鳴るソースになるとマイナス面を感じることは極めて少なく、
「805でなければうまく再生できない」というような最上級の評価になることが多々あります。B&W805の音は当初、弊社の求める音ではないと考えていましたが、特定のクラシックソースに関して明らかに音が優れていると感じていました。
特定のソースの再生において半端ない実力を発揮するスピーカーはある意味弊社がやっているバックロードに近いものも感じ「どのようにしたらこのような音が可能なのか?」と興味を持つようになり音工房Zでは805を実験対象として様々な研究をしてきました。
このB&W805はモニタースピーカーとして音楽家や、ハイエンドオーディオファンの方に愛される優れたパフォーマンスを発揮するスピーカーですが、最新モデル805D3は定価でペア90万円を超える価格になってしまいました。
音工房Zでこのクラスの音のスピーカーを誰でも購入できるような価格帯のスピーカーキットとして創り出すことができないものか?低コストの安い予算で高級品に打ち勝つものを目標に作るというのは夢があって面白いものです。音工房Zは開業から10年経過し、今はスピーカーユニットも協力会社に希望のものを作ってもらうことができるし、ブラインドテストで音を作り込むという必殺技も覚えました。
果たして、どんなものができるか??
続きをお読みください。
Z1-Livornoの開発3
B&W805Nautilusの研究
B&W805Nautilusレベルの音質を安価な2WAYのキットとして実現するという目標をたてましたが、具体的な方向性としては当初次の2つをテーマに掲げました。
●クラシック系ソースを中心に据えて音を作ってゆく
●ブラインドテストでB&W805Nautilusレベルと遜色ない音を達成し、音工房Z流の味付けを加える
弊社がここで対象として使っているのは1998年に販売されたB&W805Nautilusです。20年以上前のスピーカーにも関わらず大変優れたパフォーマンスを発揮するスピーカーですが、まずはこちらのスピーカーを分解して分析してみます。
まず、一般的にはオーディオファンの方はちょんまげと言われるドームツィーターが目立つのでそちらに目がゆくと思いますが、
個人的には805の最大の特徴はツィーターではなくウーファーからでる150Hzから250Hzあたりの「中域の厚みと独特の質感」が1番の特徴だと感じておりました。このミッド帯域が厚いと女性ボーカル系のソースなどは、煩くならないので聞きやすくなる反面、音のクリヤさが失われてベールが一枚かぶったような音になりがちです。
一方、クラシックの再生においては楽器の特性をみても分かりますが、40Hz以下の超ローエンドが出ているかどうかはさほど問題ではなく150~250Hzあたりの中低域から中域の帯域に凹みがないほうが大事だと感じておりました。
※40Hz以下が必要なのはパイプオルガンとか一部の楽器に限定されます。
150~250Hzの帯域というのは、ほとんどウーファーの素の能力に関わってくるところでバスレフ箱にした場合はさほど箱の調整は関係ありません。バックロードホーンやBHBSではそのあたりの帯域も箱からでますが、普通のバスレフ箱においては通常もっと下の帯域にダクトの共振周波数をもってきます。
(805Nautilusは計算上ダクトFdは44Hzあたりです。)
ですので、小型のバスレフ箱でミッドバスを厚くしようとしたとき、箱をいじくり回すよりスピーカーユニットの特性から設計を考えたほうが早いのではと考えました。もちろん全体のバランスも大事です。ちなみにここの中域帯域はバックロードやBHBSで持ち上げることも可能ですが、どうしても特性が凸凹になるのでここの帯域を綺麗にだしたい時はシングルバスレフがやはり一番良いと考えました。
805のウーファーの素のF特を確認してみたくて、弊社の無響室にてウーファーをJIS箱 にいれて周波数特性を確認してみました。測定はユニットの軸上にマイク10センチの 距離で行っています。
測定は10センチの距離で行っています。能率が高いウーファーにインピーダンスの補正回路と6dB/octのネットワークを入れて高域をカットしています。弊社にあるウーファーなどと比較してみてわかったのは、805のケブラーコーンウーファーは特段ミッドバスが特性上多く出ているわけではないことがわかりました。
続いて、ツィーターです。「ちょんまげ」と呼ばれるエンクロジャーの上部に配置されたノーチラスツィーターをスタンドの上にのせて測定してみました。点線が付属のネットワークありで20Hzから20KHzまでスィープしています。実線はネットワークなしで1KHzから20KHzまでスィープしています。
こちらはネットワークを見てみると12dB/octのネットワークと抵抗で音圧を落としています。抵抗の正確な減衰量は不明ですが4dB程度は落としている感じです。クロスはだいたい3KHzあたりで、ツィーターは5KHzあたりから落ちてきていますので結構スーパーツィーター的な利用方法なのがわかります(ネットワークは単純な12dB/octではなく結構複雑なことをしています。)。
続いて、箱についてです。箱の内部は船のような構造になっていて大量のウレタンのような吸音材が詰めこまれています。この複雑な箱はほとんど補強的な効果を狙ったものだと思いましたが、もしかしたらこの複雑な構造が何かバックロードのような音道構造として意味をなしているのか?この箱の構造によって中域の厚みをだしているのか?と思えてきてある実験をしました。
その実験とは、805とほとんど同じ容積の真四角の箱を作って、805と特性比較をしてF特に何らかの変化がでるかを確認できないか?と思ったのです。しかし、805は箱がR形状の上内部の仕切り桟があるため正確な容積を知るのは容易ではありません。まずはエンクロージャーの底板を紙でなぞったものをスキャンし、CADに図面に起こして概算の内容積をだしてみました。
結果は補強なしの箱が概算で約16.4Lでした。補強でそこそこ容積を取られているのが予想されます。補強部分は穴があいていたりするので、 厳密ではありませんが、約6mmのMDF板が縦方向に2枚、横方向に3枚入っています。くり抜かれた部分を50%として計算すると、950mLとなります。つまり補強部分を差し引いた純粋な内部容積は16.4-0.95=15.4Lとなりました。誤差はそこまで大きくないと思います。
ダクトはΦ50、長さは直管部分が 110mmで、テーパー部分は前後に60mmほどあります。トータルを140mmとして計算しますと計算上のダクトの共振周波数は44.4Hzとなります。
この箱がR形状でなく、内部補強(音道?)のない真四角な箱だった場合に何かしら特性変化が起こるのか?と思いほぼ内部の容積が15.4Lと同じになるW200×D315×H350(板厚15mm)真四角の箱を即興で作ってみましてウーファーをいれて測定してみました。
実線(オリジナル)と点線(弊社の作った真四角な箱)がほぼ同じ位置に来ているのがわかりますでしょうか?R形状の箱と内部の凝った作りはF特上に違いを生じさせるものではないということがわかりました。つまり内部の複雑な桟はバックロードのような音道になっているわけではなく単純な補強と考えてよさそうです。(箱の外形がR形状か、真四角かのテストは以前ブラインドテストをしたことがあります。バフルの面積は音に影響をもちましたが、外形については、音の影響は軽微でデザイン的な要素のほうが大きいという結論でしたが、今回も同じ結果でした。)
続いて内部に大量に詰め込まれているウレタンスポンジのような「吸音材を入れた場合」と「吸音材を入れない場合」の周波数特性を比較してみます。
写真左の「吸音材を入れた時(実線)」と「吸音材を入れない時(点線)」の特性比較を見てください。特性上は若干の違いに見えますが、実際に耳で聞くと大きな違いです。箱の形状や内部の複雑な仕切り板よりか吸音材のほうが音への影響度が大きいことがわかります。
コストパフォーマンスで音が良いものを作るという前提に立った時、箱は特に凝ったものである必要はなく普通の真四角の箱にウーファーとツィーターの2way構成でいけるのではと思いました。805を分析してみてわかった大事なことは「スピーカーユニット」と「ネットワーク」の2つのバランスをネットワークで作り込みミッドバスを調整してやることで決まるかなと思いました。
Z1-Livornoの開発4
ウーファーZ-Livornoの開発
このページを読み終えるのに30分もかからないと思いますが、ウーファーの開発は実現までには実に長い道のりがありました。時間がかかった最大の理由は海外のOEMメーカーと何度もオリジナルのスピーカーユニットの試作を繰り返してもらったことによります。一番最初にオーダーしたのが2017年の10月で、こちらのスピーカーの発表が2020年の6月ですから2年半近くかかっています。
スピーカーはコンセプト的にコストパフォーマンスを重視したものになるため、 Z800-FW168HRのように豪華なものを使うことはできません。しかしウーファーには805に使っているのと同じケブラーを採用するのは、他のいくつかの紙のウーファーでテストをして必須だと感じていました。
ケブラーコーンウーファーの特徴は、ある意味FOSTEXのFEシリーズとは対極的の鳴り方です。派手さは皆無で、音離れはさほど良くなく、音像が後ろに引っ込む感じ。ただ低音はローエンドからミッドまでしっかりでてくれる。カラーレーションがないのも特徴です。
ケブラーコーンは紙のコーンに比べても高価なのですが、私は直感的にケブラーによる「味付けの少なさ」と「中域の厚み感がでる」というこの2つだけは絶対に外せないと思いました。そこでここには予算を重点的に突っ込むことを決めて、ユニットの製作依頼をいたしました。口径はコストの関係で13センチ口径となりました。試作やお借りしたウーファー等はOEM受託していただいたメーカーとの約束で出すことができませんが下が最終版となりました。
スピーカーユニットの名称は「Z-Livorno」。
(ゼット-リボルノ)
Z-Modena、Z-Trentoに続いて3作目の音工房Zのオリジナルユニット(ウーファー)となりました。
このユニットは音とインピーダンスの調整や、デザイン的な細かいツメの作業のために、2回ほど作り直してもらいました。
Z1-Livornoの開発5
ツィーター Z-Astiの開発
続いて、ツィーターの開発です。
ツィーターは日本のメーカーに依頼して設計からお願いしました。
ツィーターはウーファーが決まってからそれに合わせて音を決めたので、ウーファーよりかは短時間で完成しました。ドームツィーターはFOSTEXのマグネシウムドームツィーターとかを使えば品質が良いものができるのがわかっていますが、コスト的には予算を超えてしまうので不可能です。コストパフォーマンス重視で比較的安価なキットで売りたいと思っていたので、FOSTEXのマグネシウムドームを使うとスピーカーユニットの価格だけで5万突破確実です(笑)
音色的にはホーンではなくドームにするのは決めていました。ウーファーの特性に合わせた素性のドームツィーターで、できれば金属系の振動板が希望でしたが、希少金属はコスト的に難しいので音が希望通りになればこだわらずにいくことを考えていました。
また私が今回やってみたかったことの一つにツィーターを6dB/octのシンプルネットワークを採用したいという希望がありました。ツィーターに入れるネットワークをコンデンサー1つの6dB/octでつなげることは、これまでも散々実験ではやってきて音の良さを確認してきました。しかし、商品として販売するとなるとツィーターの安全性を確保できないという理由で仕方なく12dB/octにせざるを得ませんでした。(市販品がほぼツィーター12dB/octのネットワークを使っているのは、安全上の理由だとスピーカーを販売してわかりました。)ここの部分を解決することが、ツィーターを開発するひとつの山になりました。
あと、できればはじめから利用するウーファーが決まっているのだからそれに近い能率のものを作ってもらって6dB/octのネットワークでアッテネーターなしで合わせるということをしたかったのです。
ツィーターを作ってくださるOEMメーカーの担当者様と何度か打ち合わせをしました結果、次のような回答をいただきました。
(1)6dB/octの接続でも問題ないツィーターを作ることはやってみないとわからない。利用するコンデンサーを決めてしまって、24時間の破壊テストをして問題がなければOK。
(2)能率は近いところまではもっていけると思うが、ネットワークによっても変わるので固定抵抗は必要になるかもしれない。
(3)金属系のドームをゼロから作るのは大変コストがかかるから、音に定評のあるソフトドームを転用してスペックを詰めるのが現実的。
というものでした。金属系のドームツィーターは妥協したくなかったのですが、1つめの試作でお借りしてテストしたソフトドームユニットは大変良かったのでこれで詰めてゆくことにしました。
試作2度目にして、(1)の6dB/octのツィーターはお渡ししたコンデンサーで24時間の破壊テストを合格して、最大入力で20Wまで可能という結論がでました!(2)の能率はウーファーとほぼ同じで、ほぼ希望通りでしたがこれはウーファーとのネットワーク調整でもしうまくいけば固定抵抗なしでいきますが、難しければ小さい抵抗を入れようということになりました。
↓の写真は2度目の試作後にできたツィーターの写真です。
ツィーターの名称は「Z-Asti」です。ウーファーは端子に金メッキファストンをつけましたが、ツィーターはコストがかかるということで断念しました。
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ネットワーク調整とひたすらブラインドテスト
最初にウーファーとツィーターの製作の話をしましたが、実際はウーファーとツィーターは何度か試作版をもらっていましてそれをボックスにいれて、簡易的なネットワーク調整を繰り替えし行っていますので話は前後しています。
ウーファーZ-LivornoとツィーターZ-Astiの最終完成版が届いたところで本格的にネットワーク、ダクト、吸音材の調整を行ってゆきました。マルチウエイの箱はシングルバスレフの箱でいくことを決めていましたので、違いを比較するために同じサイズの箱を4つ(2ペア)用意しました。
この2組の箱でネットワーク違いや、ダクトの定数違い、吸音材の量等を組ごとに変えていっては社内でのブラインドテストを繰り返し行いました。
ある程度ネットワークが固まってきた段階で今度は試作版のスピーカーと805Nautilusとの比較ブラインドテストをしてゆきました。この時はウーファーZ-Livornoは1.5KHzから12dB/octで、ツィーターZ-Astiは7KHzあたりから6dB/octで正相接続でつなげていました。
何度か簡易的なブラインドテストを行いましたが、ツィーターはクロスを変更してもやはりアッテネーターで2dBぐらい落とさないと良い結果となりませんでした。
ブラインドテストは音工房の男性スタッフ3人が20曲異なるソースをどちらのスピーカーが鳴っているか分からない状態で、「好き」なスピーカーを記入してもらう方式と、どちらが鳴っているかを当てる2つの方式を併用しています。回数はたくさんやっているのですが、平均するとだいたい6:4ぐらいで「B&W805Nautilusが好き」という結果になりました。 ツィーターの開発をしているOEMメーカーのエンジニアさんにもご参加いただいたりしました。
トータルで6:4ぐらいで負けていますが、
価格の差を考えると既に勝っているのでは?
と言えなくもないのですが、、やはりこのレベルでは到底満足するわけにはいきません。
今回はブラインドテストを開発中に何度も社内で行いました。ブラインドテストとは、「被験者」と「試験者」を完全に分けてどちらのスピーカーが鳴っているか分からない状態で「好き・嫌い」の得票をつけてゆく作業です。ブラインド状態ですと被験者は誰にも忖度することなく本当に良いと思ったスピーカーにチェックをします。
ネットワーク等スピーカーの音に大きな影響をもつスペックを少しづつ変えながらブラインドテストを行ってゆきます。複数人でやりますので手間がかかりますが、この作業は弊社の開発過程には欠かせないものになっています。
Z1-Livornoの開発7
測定からのネットワーク調整
スピーカーの音を決めるのに「測定」に頼りすぎるのは百害あって一利なしと思っています。測定で得られるのは傾向を掴むための「ヒント」を得ることであって、周波数特性の凸凹を平らにすることを目的に測定をし続けるとろくなことがありません。この考えは測定にはまっていた8年ほど前に「どんなに特性をフラットにしても良いスピーカーはできない」と悟ってから考えは変化していません。
ちなみに 日本のスピーカーメーカーがイマイチぱっとしないのは、音を決める最終決定権をもっているエンジニアが周波数特性をフラットにすることばかりに気をとられているからだとすら思っています。そんな考えの大山ですが測定をないがしろにしているわけではありませんで、傾向を掴むための測定は今でも積極的に行っています。B&W805と弊社の試作スピーカーを測定にかけてみました。
弊社の試作しているスピーカーとB&W805の特性を比較してみます。能率が3~4dBほど弊社のスピーカーが
低いので単純比較しても意味がないのですが、805Nautilusはさすがフラットな特性で凸凹が少ないです。特徴としては弊社のキットは50~100Hzあたりと、6KHzより上のスーパーツィーター帯域は多くでていることがわかりました。100Hz~5KHzあたりまではほぼ相似的に4dBほど弊社のスピーカーのほうが低いですが、80Hzから下と6KHzから上は似た音量がでています。
10KHzより上は年齢によっては聞こえない人もいますが、5~10KHzは高齢者でも普通に聞こえる高域です。弊社のスピーカーはここの5~10KHz帯域は相対的に言って3dBほど良くでていまして、ここは805を上回る一つのキーポイントになるかなと思いました。
試作の段階で自社のスピーカーに4KHzあたりにピークを感じていまして、勝手にウーファーは12dB/oct以外はありえないと決めてかかっていましたが、ものは試しにとウーファーネットワークなし(スルー)と、ウーファー6dB/octを試してみました。さすがにウーファーネットワークスルーでは高域の凸凹が半端なく難しいですが、ウーファー6dB/oct、ツィーター6dB/octの逆相のある定数でつないだときに中域の特性が非常に良くなりアッテネーターなしでもいけるのではないか?と思いました。これは普通の市販スピーカーではまず採用しないネットワーク構成です。
これを思いついたのは805のネットワークを調べてみて教科書的には絶対採用しないような、かなりびっくりするような回路を採用していたからです。「ネットワークってこんなに自由でいいんだ!」と教えていただいた気がしました。
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805D3とのブラインドテストに勝利
無響室での測定⇔リスニングルームでの音楽試聴を繰り返して行いました。私とスタッフで毎日のように少しづつネットワークや吸音材を変えてはブラインドテストを繰り返しました。
無響室測定前からの大きな変更点は
●ネットワークをウーファー6dB/oct、ツィーター6dB/oct(逆相)に変更したこと。
●その結果、「アッテネーターなし」でもいけそうなことがわかった。
●ダクトをテーパー付きにして長さを調整したことです。
ウーファーのスロープを6dB/octにしたことで鮮度が増し、クロスを結構低めにとることでアッテネーターを外しても勝負できる音になりました。音は格段に向上してきているのを実感していました。ブラインドテストを行っても正直どちらがどちらか判別がつかないようなレベルに来ている感じでした。
ここでもう一つブラインドテストの対象スピーカーを追加しました。それはこれまで比較対象としてきた805Nautilusではなく、最新のB&W805D3(定価ペア96万!)です。これまで行っていたB&W805Nautilusは20年以上前の定価ペア30万のものとの比較でしたので条件はより一層厳しくなります。
B&W805D3は、ウーファーにはコンティニュアムコーン(ケブラーではない布製とのこと)を、ツィーターはアルミではなくダイヤモンドです。
2020年4月22日に行いましたブラインドテストではツィーターを開発してくれたエンジニアさんと青木と私3人で805D3との初の20曲のブラインドテストを実施いたしました。20年近くの技術の進歩の差と大きな価格差があるのですから全く勝てる自信はありませんでした。7:3ぐらいで負けると思いました。
しかし、結果は意外や意外!805Nautilusで五分五分まで行くのに非常に時間がかかったのに、D3との比較ではあっさり55:45ぐらいで弊社のスピーカーが勝るという結果になってしまいました。3人のブラインドテストの結果はこちら。ちなみにブラインドテストを受けている最中は私はほとんどどっちが鳴っているか判別がつかず純粋に好きなほうにチェックを入れていました。その後何度か追試を行いまして、もちろん5分5分のときもあるし、負ける時もあるのですがトータルで見るとD3を上回るという結論になりました。多分この文章を見ても信じてもうらうのは難しいと思いますので、是非音工房Zのブラインドテスト試聴会にご参加して頂いてご自身の耳でご確認いただきたいと思います。
何故、このような結果がでたか?まず、805Nautilusに比べると805D3は中域の量感がスリムで、クラシックだけでなく女性ボーカルやジャズを聞いても良く鳴ってくれる感じでした。これは弊社が試作していたスピーカーの音の傾向がNautilusよりかD3に似通っていたことが挙げられます。私がブラインドテストを受けている時にNautilusと弊社の試作しているスピーカーキットはどちらが鳴っているかブラインド状態でも識別がついていましたが、D3との比較の時はどちらが鳴っているか本当によくわからなかったのです。
弊社のスピーカーに有利な結果がでたのは音圧調整(テスト時のボリューム差)にも一因があると思っています。スピーカーの能率はD3のほうが、Nautilusより若干能率が高いのでD3と比較するときは弊社のキットを+4dB、Nautilusのときは+3dBで比較していました。音量調整は1dB単位で、耳で合わせる以外に方法がないのですが、だいたい+3.5dBぐらいが正確なのだと思います(この僅かな音圧でテスト結果は全く逆になることは普通のことです)。逆に言えばボリュームをちょっと上げたり下げたりすれば差が分からないレベルの所まで来たと言えるのかもしれません。
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バーチベニヤで再試作、吸音材とダクトの微調整
社内のブラインドテストで十分納得できる結果がでるようになりましたので、ここからは音工房Z流の良いと思うチューニングを施してゆく最終仕上げに入ってゆきます。
まず、最重要のネットワークについてはウーファーにコイル1個、コンデンサーにコイル1個、アッテネーターなしというシンプルネットワークで行く方針でほぼ決まりました。ローコストのスピーカーで高級品に勝てるとしたらシンプルネットワークで活きの良い音のチューニングでいくしくないと思い、コンデンサーとコイル1個、アッテネーターなしというところで煮詰めていけたところがここまで僅差のレベルまで持ってこれた一因と考えています。
エンクロージャーに使う箱についてはこれまでパーチクルボードの試作箱で主に音のテストをしてきました。ここでキット用に販売する予定のホワイトバーチベニヤで作りました(本試作ではユニットの座ぐりを入れていません、最終仕様では座ぐりを入れています)。
シングルバスレフの箱はバックロードホーンなどに比べれば箱の重要性は相対的には低いのですが、タイトボンドを使ってしっかりクランプで固めて作りました。 試作版よりほんの僅かに容量が小さいので音に問題がでないか確認しましたが、むしろ音は良くなりました。
吸音材はフェルトを結構たくさんつめてこれまでブラインドテストをしてきたのですが、弊社の求める音としてはここまでつめてしまうのはどうしても眠たい音に納得できませんでした。そこで、もう少し活きをよくするために、フェルトの量はいつものように最小限に絞ることにしました。
ダクトも長さを変えたものを複数用意して、生のソースを用いて音作りをしてゆきました。当初はクラシックに的を絞っていましたが、最終的には805Nautilusのような完全クラシック向きというよりは、D3に近いある程度オールラウンド系に近い鳴りとなりました(ここは当初の目標とはズレてしまったところです)。
今回はキットとこれとは別に完成品も販売する予定なので、こちらのバフルも同時進行で作ってゆきました。
完成品版のデザインはバフル面積を小さくして高域反射を減らすZ800-FW168HRSの手法を取り入れました。完成品はバフルにナラ(楢・ウイスキーの樽に使う材)の集成材を使いおしゃれで高級感のあるデザインを目指しました。ネットワークにはキットより1ランク太いコイルと高級コンデンサーを採用しました。箱はバフルが30mmと厚く補強も入れたため、重量はキットより少しだけ重くなっております。
※2024年1月から販売のV2からはエンクロージャー材料を15mmMDF、バフル材に45mmの楢集成材に変更いたしております。
Z1-Livornoの開発10
完成
小型の2wayスピーカーの構想は開業当初からありましたが、ユニットの独自開発に時間がかかり2年半近くの歳月がかかりました。キットと完成品ついに出来上がりました。 (キットは在庫限りで販売終了いたしました。)
今回のスピーカーはZ800-FW168HRのような豪華な素材や物量を投入したものではなくコストパフォーマンスを考え抜いて作った商品です。自作の醍醐味である「高いコストパフォーマンスを実現する」という意味では自由に作れるより、厳しいコストの制約がある分産みの苦しみがありましたが、考え抜いた分楽しみもありました。
これまでにどうしてもやってみたかったツィーターに6dB/octネットワークを採用し、アッテネーターレスで繋げるということもOEMメーカーさんのご協力のもと実現できました。これはZ800-FW168HRでも6dB/octの音が素晴らしく良かったので標準ネットワークに採用したかったのですが、ツィーターの安全上の理由で実現できていませんでした。
(指定のコンデンサーで20wまで大丈夫です。低域のサイン波やホワイトノイズを含むCD等を大音量で流すのは念のためおやめください)
ツィーター6dB/octの自然なつながり&アッテネーターゼロの音は市販品ではほとんどないので、聞いたことがない人のほうが多いと思います。フルレンジのような鮮度の高さを持ちながらも、マルチウエイの良さであるワイドレンジの分解能の高さをあわせもったような私が前々から目指していたスピーカーに仕上がったと思います。
Z1-Livornoの開発11
V2への改定
2020年6月に販売開始したキットZ1-LivornoとZ1-LivornoSは約3年半の間に累計622セットを販売する大ヒット商品になりました。初めて自社で開発したオリジナルのウーファーやツィーター、6dB/octのシンプルネットワークが市場に受け入れられるか販売当社は不安でしたが、、お客様から寄せられたたくさんの評価(キット76件)(完成品13件)や試聴会を通じてお寄せいただくお声からZ1-Livornoの音について大きな自信を持つことができました。
この間新型コロナウイルスの流行やロシアのウクライナ侵攻などの影響による物価高騰で木材やスピーカーユニット本体の仕入れ価格が大きく上がってしまいまして、これまで販売していた仕様の商品を同一の価格で販売を続けるのは難しくなってしまいました。このたび商品の改定・価格の改定と合わせてラインナップも完成品1本に絞る決断をさせていただくことにいたしました。
音に関しては、これまでの路線を継承するためスピーカーユニットやネットワーク定数は同じものを採用しています。最大の変更点はバフルの集成材をタモに変更し材の厚みを 30mmから45mm(1.5倍)に変更した点になります。写真で前バージョンとの比較を掲載しておりますが、実物はより重厚感と高級感を感じていただけるかと思います。
前バージョンの完成品に比べてコストダウンしている部分、コストアップしている部分がございますが当初はモニター販売という位置づけでお求めやすい価格に設定いたしました。日本国内だけでなく世界中のオーディオファンへこのスピーカーを届けたいと思っております。
Z1-LivornoS(V2)の特長
1. 音工房Zオリジナルウーファー Z-Livorno
ケブラーコーンを振動板に使った音工房zオリジナル13センチウーファーです。音工房Zの求める音を具現化するために2年半の歳月を費やして制作した自信作です。 ブラインドテストを繰り返し行い市販のハイエンドクラスのスピーカーに負けない音質をお楽しみいただけます。
2. 音工房Zオリジナルツィーター Z-Asti
Z-Livornoと一緒に合わせて使うことを前提に開発したツィーターです。指定のコンデンサー1個(6dB/oct)で接続して利用することが可能で、Z-Livornoと一緒に使うとアッテネーターを使う必要がございません。
3. 超シンプルネットワーク&アッテネーターレス
ウーファーとツィーターにそれぞれ、コイルとコンデンサー1個という超シンプルネットワークです。Solen製コイルとコンデンサーを採用しております。
4. テーパー付きダクト
低域の抜けが良く、ダクト臭を低減する効果があるテーパー付きダクトを採用しています。
5. 45mm厚のタモ集成材削り出しバフル
それまで30mm厚の集成材から厚みを1.5倍にした45mm厚のタモの集成材をバフルに新たに採用しています。バフルに加工している大きな面取りはバフルからの反射音を低減させクリヤーな音質に寄与します。より重厚感と高級感のあるデザインに進化いたしました。
- ■スピーカーターミナルにはバナナプラグ対応高級独立タイプを付属しています
- ■内部配線に高品位OFCスピーカーケーブルと金メッキファストンを標準付属
- ■音工房Zの専用スタンドに対応する底面耐震用穴加工&鬼目ナットが付属しています
- ■エンクロージャー内部に吸音材をつけています。
- ■エンクロージャーは埼玉県の自社工場で全ての加工を行っております
Z1-LivornoS(V2.1)
ウォールナットエディション
Z1-LivornoS(V2)の上位版Z1-LivronoS(V2.1)を販売開始いたします。
最大の特徴はムンドルフネットワークを搭載している点です。パワフルな低域、そして透き通った高域をお楽しみいただくことができます。写真左は標準ネットワークとのサイズ比較になります。
内部の木材には15mm厚のホワイトバーチベニヤを採用しています。エンクロージャー本体とバフルの接合部分には集成材の反りを考慮したパッキン処理を施し空気漏れ対策をしています。(お出しする商品はホワイトバーチの上に吸音材フェルトを貼ります。)
フロントバフルには高級感抜群の45mm厚のウォールナット集成材を削り加工しています。エンクロージャー本体もウォールナット突板をはり、プロの塗装職人の手で最終仕上げをいたしております。
Z1-LivornoS(V2)空気録音
※ヘッドフォンで聞いてみてください。
1. メールでの直接相談にお応えします。
代表の大山へ直接メールによる相談をすることができます。
スピーカーの制作、塗装、音出し、セッティング等で迷われたことがありましたらメールでご質問ください。
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試聴会参加者様のお声
2020年6月20日,7月19日に行われました試聴会参加者様のレビューです。
ご購入いただいたユーザー様からのレビューはキット⇒こちら、完成品⇒こちらもご参考にお願いします。(一部重複もございます。)
“ さて結果ですが何と80%でZ1を選んでいました”
最新のZ701-Modena(V5)で期待を遥かに上回る音の良さでショックを受けたので、今度は2ウエイスピーカーなので更にそれを越えてくるか大いに胸をワクワクさせて私にとって2度目の試聴会に臨みました。今回はB&W805D3とのブラインド対決ということでどちらが鳴っているのかは分からず単純に自分の好みの音はどちらか で評価しました。
聴いてみると他の方のレビューにもあるように音の違いは僅かで、今や高齢の私の耳でも違いはわかるようなので例によって10曲を聴いてみました。音楽のジャンルによって好みの音は変わるので、回答がわかるまで全然自信がもてません でした。
さて結果ですが何と80%でZ1を選んでいました。私なりの評価ですが両者共に音の差はほとんどなくましてや悪い 音などするわけもなくどちらもOKという感じです。ただ音について違う表現をするならば、”Z1”の音は女性の顔に例えるならばスッピンで805は薄化粧をしているかな という印象です。
”Z1”は若々しく元気ハツラツで瑞々しい音で一方の”805”は綺麗でとてもチャーミングで輝いている感じでしょうか。 言い換えると年齢は同じでも可愛い系と美人系の女性の違いかなと言えるかも。好みの問題になってきそうです。
たまたま私は自作スピーカー造りを長年趣味にしているので音の好みの傾向が”Z1”寄りになってるのかもしれません。 Z701-Modena(V5)とZ1をどちらか購入するならばやはりZ1かなということで購入を決めました。
“ 「好きな鳴り方」をしたスピーカーの設問の回答を見て驚愕!
なんと半数以上をZ1Livornoにチェックを入れていました。”
先日はブラインドテスト、奥の深いお話、無響室/試作現場等見学等貴重な体験をさせていただき本当にありがとうございました。 また、大山代表が写真で拝見させていただいたより大変若々しい事にいろいろな意味で驚きを隠せませんでした。
当方物心ついた時(小学4年頃)よりオーディオにのめりこんでいる、還暦を迎えた自作派です。
生まれた時より「お前は耳がいい」とおだて続けられ、今日に至るまで自分なりに活用?してきたつもりです。
前置きが長くなりましたが、上記より「ご自慢の耳」を試してみたくなり、ブラインドテストに参加させていただきました。
「きれい」とは言えませんが、とにかく骨太な躯体の建物(後でわかったんですが、前オーナーは1Fで大型のホイストを設置して金属加工をされていたそうです) 案内された2Fは天井、壁、音響パネルと徹底的に対策されていました。まるで録音スタジオだな、会話も明瞭! コロナ禍より4人限定、一番乗りでセンター席をゲット、10時スタートの初回で他3名様も早々に集まり予定より早くスタート。これだけ好条件は揃わないだろうと期待満々でした。 が、「こんな感じで行います」と軽く鳴らしてくれました。 どのモデルが鳴っているかではなく(ごめんなさい)おいおい何だこれ、「聞いたことないぞこの音場」 慌ててCDはハイレゾ/SAと質問して冷静を装っていましたが、あっけなく「適当にCD-Rにコピーです」で2度目のビックリです。
ブラインドテストですのでカーテンを閉めるのかな?と予想していましたが、OPEN状態でスタート、視覚的に有利?だぞ!
試聴としては申し分のない条件で比べさせていただけましたので、なんとか粗を見つけよう・・・・
だめだ違いを見つけよう・・・・・やばい集中力が続かない(もう年だな)
といった状況で用意された10曲を30秒づつ2回B&W502D3とZ1Livornoをランダムに割り振られて再生、好きな方にチェックを入れていく
余裕のある人はそのチェックを入れたスピーカーはどっちのメーカーか?といった方法で進んでいきました。
結果を書きます、メーカーを聞き分けられた(本当か?まぐれだ)曲は10曲中7曲で一安心でしたが、 「好きな鳴り方」をしたスピーカーの設問の回答を見て驚愕!なんと半数以上をZ1Livornoにチェックを入れていました。
その後は持ち込んだ自分のCD、B&W502D3とZ1Livorno(完成品、キット)3組を自由にリモコンで切り替えて試聴。
これは先入観がありますので、「予想していた通り?」というより自分を納得させた次第です。
「お金をかけずにいい音を」のコンセプトに共感していましたが、完全にその上(ライバルは頂点)は事実でした。
細かなインプレッションは実はよく理解できていませんが、「聞き疲れのしない素直な音」を基準に選択させていただきました。
「百聞は一見にしかず」の言葉がよくわかりました。是非ブラインドテストへの参加をおすすめいたします。 本来ならばキット版の購入検討をすすめるはずですが、もう一の驚愕がありました。 参加者様の一人が「Z701-ModenaV5」にケーブルを変えた瞬間でした。 完全にやられました、このことか!え、8cmだろ、やっぱり俺はバックロードだ・・・・・
といった具合で、これからの検討課題が音場補正、先入観を排除した選択とおもいしらされた一時間強でした。 とりとめのない事をずらずらと書きなぐってしまいましたが、試聴1週間後の素直な感想になります。貴重な体験ほんとうにありがとうございました、これからもお忙しいでしょうが、是非ご自愛下さい。また寄らせていただきたいと思います。
“ エントリー層の人には無条件にお勧めしたくなる圧倒的
なコストパフォーマンスの高さがあると思います。”
本日は試聴会に参加させていただき、ありがとうございました。
自分はZ800-FW168HR+Z505-Trento+Z502スーパーツィーターを所有しているので、今更エントリー機を買うことはないだろうとは思っていましたが、例によって開発経緯を読み進めていくうちにどんどん興味が湧いてきまして…
Z800-FW168HRの開発時に泣く泣く断念されていたように見えた6dB/octネットワークと、アッテネーターレス設計を実現するための自社ユニット開発、そして「あの」B&Wの805D3と互角以上の音質という触れ込みがものすごく気になって試聴会に参加させて頂きました。
皆さんそうだと思うのですが、聴く前は正直、 『B&Wが誇るダイヤモンドドームツィーターに安価なソフトドームが勝てるわけがないだろう』 と疑ってました。笑
高域の解像度や空間表現力には「音作り」では誤魔化しようがない性能差が出ると考えていたので、そこに着目すれば楽勝で聴き分けできるだろう、と思っていました。
高域がきれいな方がB&Wだ、分からないわけがない、と。
いざ試聴開始。1曲目。1台目のスピーカー。高域がいい。うん、こっちが805D3だろう。2台目のスピーカーは…ん?こっちも高域いいぞ??あれっ?こっちが805D3か!? って感じで、なんと高域の質感に着目してもクオリティ的な差が感じられませんでした。(衝撃)
最終的には10問中8問正解(^^)vでしたが、ブラインドテスト中は「えっ、これどっちだろう!?」って判断に迷う場面が多くあり、8問正解という結果ほどは的確に判断できていた自信はなく、半分以上合ってればいいなぁくらいの手応えでした。
両者を比較すると、805D3はやや高域寄り・Z1はやや低域寄り(+中域にやや箱鳴り感?)だったので、高域の質感ではなく「帯域バランス」で聴き分けていましたが、それでもBHBS機種に切り替えた時のような一聴瞭然な違いはなく、注意して聴き比べないと違いが分からない程度の差でした。
さすがに最後の自由試聴タイムで何度も切り替えているうちに明らかな違いを聴きとることができるようになりましたが、音質面での「優劣」は最後まで決めることができませんでした。
ちなみにスピーカーのセッティングを見るとZ1は805D3よりも10cmくらい?低い位置にセッティングされており、ツィーターの高さがB&Wより低かったため、高域はやや減衰し低域はやや膨らみ、実際よりも低域寄りに聴こえていた部分もある気がします。
つまり、Z1のセッティング位置をあと10cm程度高くすれば、805Dとの違いはもっと小さく、もっと判別困難になるのかもしれません。
なお、「どちらが好きか?」の選択については、「自分が805D3だと思った方」が5回、「自分がZ1だと思った方」が5回だったのですが、実は間違えた10問中2問は、どちらも「805D3だと思って好きチェックをつけたが実はZ1だった」ものでした。
つまり、実際に好きだと思った回数は
Z1-Livorno:7回
B&W 805D3:3回
となり、7:3でZ1に軍配が上がる結果となりました。
体感としては明確に好き/嫌いが分かれる程の差はなく、「どっちもすごくいいんだけど、なんとなくこっちの方が音が太いからこっちかなあ?」くらいの感じでした。僅差でした。
なのでこの割合は曲を変えたりして何回かテストすれば都度変わると思います。
ただ、ひとつ確かなのは
『100万円の805D3と比較試聴しても全く聴き劣りしなかった』ということです。
どちらが鳴っているかの聴き分けに苦労したり、自由試聴でも最後まで優劣を決められなかったことからも、これは認めざるを得ません。
そして自由試聴タイムでZ800-FW168HRSと比較させて頂きましたが、正直、音のまとまりはZ1-Livornoの方が上だと感じてしまいました; 自分が使っているのはZ800は2013年頃のキット版ですが、Z1とはユニットのグレードが違うので、信じたくない現実でした。
Z1-Livornoは全域とてもナチュラルによくまとまっており楽しく聴けるのですが、Z800-FW168HRSはどっしりした低域の上にいきなり細い高域が乗っかってヒステリックな音に聴こえました。
※ちなみにZ502スーパーツィーターを載せて聴いた時(≒自宅環境)は、更に高域がものすごく明るくなりかなり派手なドンシャリに聴こえました。もちろんZ502を使う事で実在感は3割増しになるのですが、アッテネーターはT250Dともどもかなり絞った方がまとまりが増すのかも?と思いました。早速自宅で試していますがいい感じです。
T250Dのアッテネーターを絞って使う前提で、Z800を6dBネットワークに変更したくなってきました。
技術的なことは詳しくありませんが、
ユニットのグレードがさほど高くないにも関わらず、Z1がこれほどの音が出せる理由は、個人的には「6dBネットワーク」が一番効いているように感じます。
妄想ですが、6dBネットワークには中域の音にウーファー由来の厚みとツィーター由来の繊細さが加わりつつ、フルレンジのように全体のなじみ具合、まとまりが増す効果があるのではないかと考えています。
市販品の多くが12dBネットワークを採用している中で、6dBネットワークを実現するために自社ユニットを開発され、さらにアッテネーターレスを実現したことで鮮度の維持と「コストダウン」をも両立。
低価格・超高音質を見事に両立されていることに脱帽しました。
それにしても、キットであれば5万円台でB&W 805D3レベルの音が手に入る…
これは今までに感じたことのないレベルで価格破壊というか反則だと思います。笑
完成品の約15万円という価格については、音がキット版とほぼ同じと考えると割高に感じてしまいますが、
そもそも音質レベルが805D3級なわけなので、15万円でも十分にお買い得だと思えるサウンドです。
5万円が価格破壊すぎるだけ。笑
そして個人的にはこの完成品のデザインがツボです。
エッジィなフロントバッフルと、シンプルで癖のない真っ黒なユニットの組み合わせはAvalonを彷彿させます。
欲を言えばバッフルの厚さを2倍にしてもっと鋭角に斜めカットを入れれば更にAvalonっぽくなると思うのですが笑、それは今後のハイエンド機に密かに期待します。
長くなりましたが、Z1-LivornoはZ800-FW168HR+Z502+Z505-Trentoユーザーの自分がちょっと嫉妬してしまうような、低価格・超高音質の素晴らしい製品だと思います。
主力商品として長く頑張ってくれるように、との願いを込めて『Z1』というネーミングにしたとの事ですが、とても納得できました。
あらゆる人に聴いてもらいたいですが、中でも「これから何かひとつ良いスピーカーを」というエントリー層の人には無条件にお勧めしたくなる圧倒的なコストパフォーマンスの高さがあると思います。
(最近はどこもかしこもコスパコスパうるさいですが、Z1は本当に高いパフォーマンスを伴った上で低コスト。真のハイコスパ!)
とにかくたくさんの人に聴いてもらいたいスピーカーです。
それさえできれば、音工房Zの名を更に高めてくれる記念碑的なスピーカーになるのではないかと思います。
“ 大山氏が目指していた 「超高級ハイエンドスピーカーをその10分の1ぐらいのコストで作れないか」 という目標を、上回った形で見事に実現しています。”
7月19日の試聴会に参加しました。
音工房Zからのメルマガで、大山氏が多くの時間を費やして完成させた自信作のようで、初めから大きな期待をしていたスピーカーです。
試聴会で流された10曲を聴いた限りでは、比較に用いたB&W805D3と遜色ないクォリティと感じました。 先に音を聴いてからこのZ1を見せられたら、サイズの小ささに驚くでしょう。 こんなに小さいスピーカーからしっかりとした低音が出て、高域もバランスよく、リアリティのある音像を作っている。
音の傾向は比較したB&Wに似ているのですが、僅かな違いの部分で私はこのZ1の方が好みです。
Z1にはキットモデルと完成品販売モデルがあり、バッフル形状とデバイディングネットワーク素子の違いで、エンクロージャーの内容積はほぼ同じとのこと。 私が一番興味を持ち確認したかったのはバッフル形状の違いによる効果の程。 完成品の方はバッフル面のユニットサイドを30°程度の角度で落とし、バッフル面からの反射音による定位のボヤケを軽減し点音源に近づけるという細工が施されていますが、その効果の程を自分の耳で確認したかったのです。 すでにキット版を注文していたので、完成品の方が圧倒的に良ければ完成品に似せた形状に仕上げるつもりでした。
試聴会は例によって、比較のB&W805D3とのブランドテストから始まりました。
まだZ1の音もB&Wの音も聴いていないので、どのスピーカーが鳴っているかはカンで答えるしかなく、メルマガでの大山氏のコメントから察するしかなかったのですが、恐らく自分が好ましいと思う方がZ1だろうと思っていました。
1曲目は Hotel Carifornia、どちらが鳴っているかわからない状態で同じパートをら2回再生されますが、この曲では明らかな違いを感じました。 自分の好みに合った方をZ1と判断し、勿論この方が好ましいと記入しました。 後ほど渡された正解で、自分の判断が正しかったとわかりました。
しかし、2曲目以降は大きな差は感じられず、というより差は感じるものの、好みを問われれば一長一短でどちらとも言い難いものでした。 B&WかZ1かの判定も誤答率が高かったのですが、どちらも好ましい音でした。
ブランドテストが終わると、各自が持参したCDで好きなスピーカーを聴くことになりますが、前述の通り完成品とキットとの比較をさせていただきました。 やはり中高域で、特にソロボーカルでその差を感じました。 バッフル面を削ぎ落とした完成品はキットより音像がシャープ、キットはその点では劣るもののボーカルに厚みが感じられる。 ただ、この差を感じたのは一部のソースだけで、持参したソースのほとんどでは差を感じませんでした。
今、価格.comで調べると、B&W - 805D3はペアで90万の高額スピーカーです。 対してこのZ1はキットならば 54,800円。 1/16の価格で手に入るほぼ同等のクォリティです。 大山氏が目指していた「超高級ハイエンドスピーカーをその10分の1ぐらいのコストで作れないか」という目標を、上回った形で見事に実現しています。
わが家にこのZ1が届くのが楽しみでなりません。
しかし、バッフル形状をそのままの平坦で行くか、完成品を模した形状にするか、悩ましい問題が残っていますが......
こういうクオリティ高いスピーカーで再生する音楽は、聴く人のハートを掴み感動の世界に誘ってくれます。
ピュアオーディオ機器が庶民の手に入らない価格帯になってしまった現在、一人でも多くの方が、このZ1に触れて音楽の本来の魅力を通して心を豊かにしていただけたらと思うばかりです。
大山氏がこだわった完成品のデザインも品よく高級感があり、量販店で販売する状況であればベストバイになる逸品であると、私は思っています。
このZ1がゆくゆくは御社の主力商品になっているのではないかと、思うこの頃です。
“ 試聴を終えて音工房Zさんのお話は本当だったと確認しました。”
初めて試聴会に参加させていただきました。私自身はそんなに音が分かるわけではないので、専門家やマニアの方ばかりで、堅苦しかったりしたらいやだなと思っていましたが、そんなこともなくリラックスして試聴できました。
今回の一番の目的は、高価な「B&W805D3」に対し「Z1-Livorno」は、ほとんど差がないという音工房Zさんのお話が本当か確認したいというところでした。
試聴会の流れとしてまず30秒ずつ同じ曲をそれぞれのスピーカー(目の前にありますがどちらが鳴っているのかはわからない)から流し好きな方にチェックを入れる、可能であれば機種名を判別する。これを10曲について繰り返します。私は「B&W805D3」もほとんど聞いたことがなく、たとえ違いがあってもどちらのスピーカーかわからないので機種の判別はせずに、好きな方にチェックを入れることだけをしました。結果10曲中7曲が「Z1-Livorno」を選択していましたが、どの曲もほとんど同じに聞こえ、選択に迷うというのが実際でした。アキバなどの電気店舗で色々な機種を聞くとそれぞれに違いがあり、どちらが好きか比較的容易に判別できますが、今回は自分には判別不能というのが結論です。
10曲のブラインドテストの後、自分の持ってきたCDを試聴させていただきました。何にしようか迷いながら2曲聞かせていただきました。そのうちの吉田拓郎ライブ73という1973年録音アルバム(ロック系)ではB&W805D3の方がほんの少し好きかな、という感じです。
試聴を終えて、音工房Zさんのお話は本当だったと確認しました。そして、ほとんど同じに聞こえるのにこの価格差は何だろうという気持ちです。「Z1-Livorno」は世間でもっと認知されるべきだと思います。自宅には「ハーベスsuperHL5pius」があり気にいっていますが「Z1-Livorno」と比較したらどうなんだろうと考えます。単体で聞いているとわからないけど、比較すると良さあるいは悪さがわかるかもしれません。
<追記>
オーディオ評論家の方々に同じようなブラインドテストしたら面白いですね。(まあ、参加しないかな.)
“ Zは音の出所の一体感でしょうか。こちらのほうが好みです。”
鳴っりぷりは素晴らしく、中音域(ボーカル)はB&WよりD,Wともに豊かでした。
比較になってしまいますが楽器の高域とのバランスでB&Wは解析が優れていることから試聴会での評価では高いですが、長く聞く自宅を考えればZ1です。
理由は耳障りが良いからです。
中高音域の解析が劣っているのは比較するからで単体では良かった。ややもするとB&Wは高域が強調されすぎている感があり、バランスが高域よりかなと思います。Zは音の出所の一体感でしょうか。こちらのほうが好みです。完成品と自作キット品の際はよくわかりませんが、完成品は音が固く感じた。
“ テスト結果を拝見すると、Z-1Livornoが好きな曲は5曲でした”
7/19の試聴会に参加しました佃です。 当日は貴重な体験ができました、有り難うございました。さて試聴会レビューを本メールでお伝えさせていただきます。
◎ブラインドテスト
テスト結果を拝見すると、Z-1Livornoが好きな曲は5曲でした。曲目をみると、楽器の数が比較的少ないものであったように思います。 スピーカーの正解が60%の私の感想ではありますが、両者スピーカーの特色としては
B&W805D3
高域は繊細でレンジが広く、低域はソフトだが力強い。 中域も破綻することなくまとまっている感じ。
Z-1Livorno
高域はレンジ感がやや後退、低域は輪郭がはっきりして力強い。 中域はB&Wより少し張りがあるがやや平坦な印象。
◎持ち込みのCD試聴
自宅のZ-700FE108Solでは煩く聞こえる音源を選び、マルチウェイSPでどう聴こえるかのテストでしたが、結果はあまり違いを感じませんでした。これはソースが悪かったのでしょう、仕方ありませんね。逆にZ-700は良く頑張っていると思いました。
“ 音は自然でスピーカーの存在を意識させません。”
本日は試聴会に参加させていただきありがとうございました。 研究熱心で謙虚な姿勢に感じ入りました。御社はさらなる進化をされる事と期待しております。スピーカー比較試聴用に常々使用しているCDを聴かせていただきました。ベートヴェンの交響曲第五番では良い意味で予想を超えるパフォーマンスを実感しました。
音は自然でスピーカーの存在を意識させません。音楽自体を楽しめます。
低域の量感もしっかりありながら切れが良くスピードがあります。
ウーファーとツィーターのつながりも良くフルレンジのようで、音を濁らせる要因となるクロスオーバーネットワークがシンプル、かつアッテネータ無しでエネルギーロスも少なく瑞々しい音を実現しています。
時間の関係もありB&W805D3との比較はできませんでしたが、他店でB&W805D3を試聴した際は、室内楽は良いが編成の大きな交響曲は難しいなという印象でしたので交響曲に関しては、Z1-LivornoはB&W805D3を凌駕していると思います。機会があればこの2機種を色々な音楽ソースでじっくり聴き比べてみたいと思います。
モーツァルトの弦楽五重奏曲K.516についてはB&W805D3が私の今まで聴いたスピーカーの中では一番魅力的でした。さらに高価なB&W802D3も聴きましたが室内楽では805に到底及びません。但し、私にとって室内楽だけで805を購入するにはあまりに高価です。
Z1-Livornoは可能性を感じさせます。今回の比較試聴ではやむなく他のスピーカーと並べているのでしょうが、他のスピーカーと隣接させず十分な空間を与えてセッティングを追い込めば前後左右にきれいに音場がひろがり各楽器の位置がぴったり決まるでしょう。自宅で聴いてみたいと思いました。
“ 今回の経験はかなり衝撃を受けました。”
まず、このご時世に試聴会を開いていただいてありがとうございました。
まずブラインドテストをしたのですが、両方のスピーカーを一度も聞いたことがない状態でのスタートでしたので、見た目の印象でワイドレンジで高音がキラキラしているのをD3。高音がシルキーなのをZ1と過程して聴き始めました。
大山様の言う通りかなり似た音色ですがレンジの広さと高音の特性が違ったため聴き比べは可能でした。仮定D3の方がどの曲も好みでありやはり値段差はあるなと思いながら終わりました。
それが回答を知りびっくり。なんと高音がキラキラしてワイドレンジなのがZ1でした。しかも6万弱のキット。90万円のD3は正直バランスがいま一つでした。おそるべし結果でした。その後完成品と聴き比べるとやはり完成品のほうがさらに余韻が綺麗でした。
さらにZ800-FW168HRSとも聴き比べましたが、ほとんど好みの差レベルで値段が1/3であることを考えるとZ1の圧勝でした。今回の経験はかなり衝撃を受けました。Z1がZ800の市場までうばってしまうのではと危惧しながら帰路につきました。
“ 少なくとも音工房試聴室においては本当に互角であった!”
音工房Zのラインナップにはなかった小型2Wayスピーカーの完成・発売を告げるメールマガジンをいただき、「これは是非聴いてみたい」とすぐさま思った。オリジナルユニットを開発したことからも強い期待を抱いたが、天下のB&W805D3と「互角の実力を備えたスピーカー」というあまりに高い目標設定に、失礼ながら半信半疑の思いで工房に足をはこんだ。
前半のブラインドテストでは、①細部の情報量②音楽のまとまり③自然な音色というあたりをなんとか分析的に聴こうと試みたが、こうしたテストに不慣れな素人には難しく、結局は「どちらが高いスピーカーに聴こえるか」という直感にしたがい、虚心坦懐に印をつけた。
後半は自分でリモコンで切り替えシューマンの交響曲、ドビュッシーのピアノ曲、バルトークのピアノ協奏曲の三曲を順番に試聴。聴き慣れたクラシックの曲だと「繊細な残響表現」など805の長所がまずは耳につく。緻密な音にほんのすこし艶がのり、どのような環境でも心地よく聞こえる巧みな音作りだ。見た目の印象もさすがに洗練されている。
一方新作2Wayの外見は「潔い」という言葉がぴったり。直接音がストレートに出てくるので鳴らす部屋によって良くも悪くもなりそうだ。キット版と完成品は同じユニットでも、けっこう音色が異なると感じた。キット版は素直で爽やか。完成品は大人っぽいコクのある響き。この違いは何によるものか青木氏に尋ねると、採用しているネットワークのメーカーの違いが大きいとのこと。
ところが視覚的印象をふりはらい、音に集中して聴き進めるうち、3機種の決定的な優越は次第になくなってくる。音楽として琴線に触れるかどうかは音源の条件(曲想、使用楽器、録音年代、どのくらい間接音が入っているかなど)で決まるのかも。同じピアノ曲を聴いても805はコンクールを勝ち抜いてきた青年の演奏、キット版は若く清楚な女性ピアニスト、完成品は熟練した名匠の演奏のように聴こえ、それぞれが味わい深い。
805を購入すればしばらくは幸福だろうが、やがて次の機種に目がうつってゆくような気がする。一方音工房Zのキット版はどんな仕上げにしようか、将来ネットワークに手を加えて違う音色にしてみようかなど、さまざまなことを考え育てる愉しみがある。価格の大きな差額を室内の音響条件向上に使うこともできる…などとつらつら考えた。
短い30分間の試聴が終了し、ブラインドテストの正解と自分がつけた印を照合すると、10曲中5曲がB&W社、5曲が音工房Zであった。少なくとも音工房試聴室においては本当に互角であった! 疑いの念を抱き申し訳なかったと反省…この新作2Way、オーディオ誌上でブラインドテストをしたらさぞ痛快であろうと妄想した次第。
“ 驚いたのは10曲比較試聴によるブラインドテストで9曲について同社の新作スピーカーを選んでいた。”
昨日朝早く、音工房Zへ同社で購入したキットスピーカー組立品(音友ムックのスピーカーに同社のキットを組み合わせたスピーカーで以下当方組立品)を持ち込み、B&Wと同社の新作スピーカー(Z1-Livorno)との比較試聴を頼み込んで行うことができた。 持ち込み比較は行っていないと最初断られましたが、朝一番の客、ということで同社のブラインドテストを予定時間より早めに終了して、キット組立品との比較をさせていただいた。 ただし、このブラインドテストでは、B&Wのスピーカーと同社の新作スピーカーとの比較だけである。驚いたのは10曲比較試聴によるブラインドテストで9曲について同社の新作スピーカーを選んでいた。
これは無理に頼み込んだお礼のため、忖度して良いスピーカーとして選んだのではない。難しいブラインド比較の中で違いを聞き分け、当方の好みとして選んだのだ。 このブラインドテスト後、当方組立品との比較試聴をしてみたが、確かに、新作スピーカーは、2WAYとしてバランスの取れた良好なスピーカーだった。 当方組立品は、フルレンジ一発の明瞭さがこのスピーカーに勝っていたが、低域の量感については新作スピーカーに明らかに負ける。 新作スピーカーも当方組立品も、スペックで書けば、低い方の周波数特性は50Hzとなるのだが、新作スピーカーの低域は、質も量もよかった。 ただ当方組立品と比較すると、フルレンジ一発の長所としてよく指摘されている表現になるが、音の新鮮さ明瞭さが欠けるという評価になる。 しかし、B&Wと比較すれば十分に明瞭である。B&Wの優れたところとして、音の明瞭な点がオーディオ雑誌に良く指摘されているが、この明瞭さというのは、実は曖昧な評価である。
当方が表現したい明瞭さとは、例えばオーケストラを聞いたときに、楽器の位置が良くわかるかどうかである。音像定位とも言われたりする。 音響効果の悪いコンサートホールで生演奏を聴くとオーケストラは音の塊となる。これは安価なスピーカーに近い聴こえ方である。 しかし、音響効果の良い、例えば筑波学園都市にあるノバホールのようなところで聴くと、第一バイオリンや第二バイオリンなどがきちんと分離される。
B&Wもこの意味で明瞭なのだが、新作スピーカーは、前後間の関係が見えるような響きである。これがフルレンジ1発になるともっと明確となり、音像定位だけは100万円をこえるB&Wに迫るものがある。 年を取って耳が悪くなってもこの明瞭な音像については聞き分けることが可能で、どうしても良いスピーカーというと楽器が見えるかどうかという観点で選んでしまう。
新作スピーカーは久しぶりに購買意欲が湧くようなスピーカーだったが、残念なことにキット品と完成品では、同じスピーカーパーツを使いながらも聞こえ方が少し異なり、キット品はB&Wに近くなる(説明ではネットワークが異なる、とのこと)。 どうせなら十分に良くなるキット品を購入したい。完成品には作る楽しみが欠けている。趣味の世界では、自分のわがままを十分に満たし満足したい。
友人は100万円をこえるB&Wを購入して満足している、と言っていたが、お金では決して満たされない世界が、「自分で作る」キット(注)にはある。そして、キットで自分の満足できる世界が現れたのなら、大変幸せである。
多目的トイレの楽しみを当方は理解できないが、おそらくキットを組み立てて苦労して自分の満足な世界を得る楽しみなど渡部建氏には理解できないだろう。
趣味について他人に必ずしも共感されるとは限らないが、たとえ共感されなくても恥ずかしくない趣味を楽しみたい。
オーディオは、趣味として絶滅危惧種である。しかし、音の再生を電気信号の変換で行う限り、理想的なスピーカーは永遠のニーズとして残る。生ビールでさえ好みが分かれるのである。電気信号を変換して誰もが良いと認める生音を再生する技術が完成するとは思えない。音工房Zのような取り組みは面白い。
(注)可能ならば自分で0から設計し、材料を買ってきて切断するところもやりたいが、そこまでオーディオの趣味に時間を割けない。オーディオよりもやりたいことがあるので、スピーカーなど組み立てている時間など無いのだが、音工房Zのキットはそこそこ作る楽しみを味わえる。
“ 2つのスピーカーの出音は明確に違いがありました。”
本日の試聴会参加に先立って行われた「ブラインド・テスト」についての感想から記載します。
1曲の試聴時間が30秒づつと短めであるため、各曲毎の比較ではなく全体としての比較感想となります。
2つのスピーカーの出音は明確に違いがありました。
Z1-Livornoは女性ボーカルで鼻が詰まった様になる2-3KHz付近の帯域でディップ、また5KHzより上の帯域ではフラットよりも少し下がっているように感じました。
対するB&W805D3はそれが無く、ハイハットなど音のキレを感じることで魅力的な音に聴こえました。
100Hz以下の低域では、B&W805D3に対して高めでレベルが落ちていくので低域のボリュームは少し控えめとなりますが、全体のバランス的には不足を感じませんでした。
続いて持ち込み音源での試聴です。
今回の持ち込み音源はからは以下の6曲を試聴しました。
1.Al Turner - Ride Along
2.Lover Come Back to Me - Roberta Gambarini
3.Manhattan Daylight - 木住野圭子
4.Giorgia Fumanti - Campi d'Oro
5.Brian Bromberg - Come Together
6.山中千尋 - Life Goes On
ウッドベースの弦が指板に当たって出る音のリアリティさを805D3に感じましたが、Z1-Livornoでは詰まった若干籠った音となり、リアリティさが薄まっていました。
個人的には1KHzから右肩上がりで5KHzで3dB上がると、より気持ち良く聴けると思いました。
最後に、仕上げに関しての感想です。
Z1-Livornoの完成品版では、無垢の集成材を使ったエッジを落としたバッフルと突板仕上げは高級感があり、魅力的な仕上げです。
もし、キット版を入手したならバーチべニアの木目を生かした仕上げとするか、杢目の綺麗な突板仕上げとするか、悩むところです。
“ ブラインドテストでは、B & WとZ1-Livornoの好みの聞こえ方としては半々ではありました”
先日は試聴させていただきありがとうございました。 私自身は特にスピーカーに興味があったわけでは無く、主人の付添で行ったわけなのですが・・・思いの外楽しめました。 特に、ブラインドテストなるものが楽しかったのですが、スピーカーによってこんなにも音が代わり、音楽自体が違って聞こえるのだと実感しました。
ブラインドテストでは、B & WとZ1-Livornoの好みの聞こえ方としては半々ではありましたが、Z1-Livornoは見た目もシンプルで、どんな部屋にも馴染むのではないかと思いました。 完成品とZ1-Livorno(キット)も、どっちの音が良いとかまではわかりませんでしたが、 どっちも嫌な感じは無く、心地よく聞けたと思います。 見た目的には、我が家の床が無垢材なので、やっぱりZ1-Livorno(キット)が好みです。
以前から主人がスピーカーを欲しがっているのですが、びっくりするほどの価格だったりするのですが、Z1-Livornoだったら購入しても良いと思いました。 私も音楽はジャンル問わず大好きなので、今までは聞ければ何でも良いと思っていたのですが、自分で組み立てたスピーカーから聞く音楽は、また一味違うのではないかなと思いました。 近い将来、主人が購入する予定なので、私も楽しみにしたいと思います。 音工房Zは、スタッフの方もとても親切だったので、少し遠いですがまた足を運びたいと思いました。 この度はありがとうございました。
“ 今回の試聴会で、Z1-Livornoはとてもよい
スピーカだと分かりました”
ホームページで開発詳細を拝読し、これは自分の耳で確認せねばならないと強く感じ、早速試聴会に参加させていただきました。
確認したかったことは主に3点 1.キットと完成品の差異 2.B&W805D3との差異 3.自分の聴きたい分野のソースがどう鳴るのか です。
完成品はデザインがとても良くできています。キットを同等に仕上げるには時間と木工スキルが必要であり、価格差は妥当だと思えます。もしもデザインと同じくらい音にも差異を認めれば、完成品を購入してもよいのではないかと思っていました。
しかし、キットを組み立てることで長年に渡る開発ストーリの一端を共有することができ、よりスピーカへの理解が深まるとも思っておりました。
持ち込みCD比較試聴の結果、意外なことにキットのほうが好みと感じる割合が高かったのです。楽器や声の実在感がより自分のイメージに近かったです。音像が完成品よりも一枚、前に出てくる感じです。
次にB&W805D3との比較では、Z1が好みでした。805のほうが音像が一回り小さく一歩引っ込んだ感じがしました。解像感、定位はほぼ同等に思えました。
B&Wはクラシック再生に強い。というイメージがあります。私は普段クラシックを聴きませんが、それはきちんとした再生環境が揃わないと楽しめない。環境が揃うまでは聴かない。という考えからです。
Z1は音作りの過程でクラシック、B&Wを意識していますから、B&Wとの比較でクラシックも楽しめるスピーカか判断がつくと思っておりました。
試聴結果、クラシックも充分楽しめるスピーカだと思います。ブラインドテストの結果も後半のクラシックパートはほぼZ1にチェックを入れておりました。
今回の試聴会で、Z1-Livornoはとてもよいスピーカだと分かりました。私の聴きたい分野に満遍なく対応してくれそうです。
私は自作派で、今は全ての機器を製作中のため、再生装置はiPadしか残っていません。音出しまでしばらく時間がかかると思いますが、Z1の購入を検討したいと思います。
“ 17倍もの価格の高級機に勝ってしまうとは恐るべき傑作機です! ”
2020年6月20日(土)に音工房Zさんで開催された個人試聴会に10:30からの枠で行って参りました。 今回のメインは新製品となるZ1-Livornoのキット版と完成版でした。 小型2ウェイでコストパフォーマンスの高い、いや、それどころか、このカテゴリーの市販の最高級商品と同等な音を目指したと言う意欲作です。
まず最初に、Z1-Livornoのキット版と市販の90万円級のB&W 805D3とのブラインド比較試聴に臨みました。 後で「回答」と照らし合わせてみたところ、好き嫌いで言えば、Z1-Livornoのキット版の7勝、B&W 805D3の3勝、その中に、「同じくらい(良い)」とメモした物が3つあり、これらを差し引いた場合で、Z1-Livornoの5勝、B&W 805D3の2勝と、いずれの場合でもZ1-Livornoのかなり明確な勝利となりました!
どちらのスピーカーが鳴っているかを当てられたのは2回で、8回は外れで、ほぼ逆だと思い込んでいたと言う結果でした。 重心が低く高級感のある音だと感じてB&Wだろうと思ったのが実はZ1だったと言うこともあり、これは驚くべき出来栄えです! これでキット価格54,800円税込とは、17倍もの価格の高級機に勝ってしまうとは、恐るべき傑作機です!
その後の持参CDによる試聴では、上記の2機種に加えてZ1-Livorno完成品と、音工房Zさんの2ウェイのフラッグシップ機であるZ800-FW168HR完成品ムンドルフ製ネットワーク版と言う世界中の録音現場でこれをモニタースピーカーとして使えば良いのにと思える高忠実度の実力機を加えた4機種を、私が実際に何回も生演奏に接した3人の名オペラ歌手のCDで聴き比べました。 一度につないでセレクターで切り替えながら比較試聴出来るのは3組まででしたので、前半はB&W 805D3、Z1-Livornoキット版、Z1-Livorno完成版の3組を、後半はB&W 805D3、Z800-FW168HR、Z1-Livorno完成版の3組を比較試聴しました。 その印象は以下の通りです。
Z1-Livorno完成版 148000円税込
音の色数が豊富で音色の変化や音の表情の変化に対する表現力が豊かです。生の音楽の音の多彩さや表情の豊かさを一番良く伝えてくれると言う意味で、とても面白い音がしました。スピーカー固有の音質的な癖は殆ど感じられない忠実度の高い音だと思いました。
今回は低音重視のソフトを聴きませんでしたが、少なくともそれ以外の点ではZ800-FW168HRと並んで最も生の音楽に対する忠実度が高い音質で、本機よりもサイズも大きく価格も高いZ800-FW168HRの方がやや余裕を感じられる一方で、音色の変化や音の表情の変化を再現する多彩な音や生き生きとした音に関してはこちらの方が若干ながら優れているかも知れないと言う、素晴らしい音でした。これで148,000円税込とは、恐るべきコストパフォーマンスの実力機です。奥に広がる音場再現も、音像再現も、どちらも優れた高忠実度の実力派スピーカーです。
ここまで素晴らしいと、購入検討対象として、低音ソフトも聴いてみたかった気がします。
Z1-Livornoキット版 54800円税込
完成版に比べると箱鳴りの影響が若干大きいのか、僅かに箱に音がこもる感じがします。板厚やバッフル面の影響など、完成版とはかなり異なる部分がありますので、音質的にも僅かながら差は出ている様です。
その分、音色が一定にまとまる方向性が若干出て、音の表情は若干抑えられる感じもあります。
しかし、その差は大きいものでは無く、コストパフォーマンスを考えると大変良い驚くべき実力機です。
これを買ってみて作ってみるのも良いかも知れないと思える素晴らしいハイコストパフォーマンス機です。
B&W 805D3 90万円クラス
過去の同社製品よりは音の表情が豊かで、改良の成果が見られますが、それでもZ1-Livorno完成版よりは音の表情の変化は抑え目で、良く言えば落ち着いた音です。
良くも悪くも高級オーディオの音です。破綻なく聴ける良い音ですが、生の音楽のイキイキ感は、ほんの僅かながら抑えられる様に思います。
Z800-FW168HRムンドルフ製ネットワーク版 546,000円税込
いつ聴いても素晴らしい音です。高忠実度だと思います。ただ、今回はZ1-Livorno完成版がこれを脅かすくらい良い音で、コストパフォーマンスやスペースファクターを考慮するとZ1-Livorno完成版の良さを認めざるを得ないと思います。低音ソフトも含めて聴けば、本機ならではの良さももっと認識できたかも知れませんが、今回は出来の良い小型スピーカーの試聴というつもりで低音メインのソフトはかけませんでした。それでも本機の余裕がある感じは認められました。一方で、音色や音の表情の多彩さ、生の音楽の生き生き感、そう言った意味での面白さではZ1-Livorno完成版の方がほんの僅かながらむしろ優っているかも知れないと感じられました。
よくある質問
以下のものは返品・交換・返金の対象になりません。
★板のそり、木口の色合いの違い、突き板の継ぎ目などがあること
★主観的な音に関わること
Z1-LivornoS(V2) 仕様
ユニット | ウーファー:Z-Livorno ツィーター:Z-Asti |
---|---|
ネットワーク | Solen製 |
周波数特性 | 50Hz~20KHz |
能率 | 86dB/W |
最大入力 | 20W |
インピーダンス | 8Ω |
寸法 | 幅197mm 奥行き260mm 高さ300mm |
重さ | 5.3Kg / 片ch |
ターミナル | バナナプラグ独立ターミナル |
内部配線 | OFCケーブル |
エンクロージャー形式 | バスレフ型 |
エンクロージャー材 | エンクロージャー:15mmMDF (木目調ブラック仕上げ) |
Z1-LivornoS(V2.1)
ウォールナットエディション
仕様
ユニット | ウーファー:Z-Livorno ツィーター:Z-Asti |
---|---|
ネットワーク | Mundorf製 |
周波数特性 | 50Hz~20KHz |
能率 | 86dB/W |
最大入力 | 20W |
インピーダンス | 8Ω |
寸法 | 幅197mm 奥行き260mm 高さ300mm |
重さ | 6.2Kg / 片ch |
ターミナル | バナナプラグ独立ターミナル |
内部配線 | OFCケーブル |
エンクロージャー形式 | バスレフ型 |
エンクロージャー材 | エンクロージャー:15mmホワイトバーチ合板 /ウォールナット突板 |
塗装 | ウレタン塗装 |