マルチウエイSPを点音源化する意味
点音源的にはフルレンジ1発が最も優れていますが、現在市販のスピーカーではマルチウエイ型(スピーカーユニットを複数利用)が主流です。
そのマルチウエイ型においても可能な限り点音源的なスピーカーに近づけることは大きな効果があります。そのためスピーカーメーカーは知恵を絞って点音源化の努力をしています。
↓↓は点音源型スピーカーの特徴をまとめたものです。
■音場感が良い ホールの雰囲気、空気感がリアルに伝わる
■音像定位が良い 楽器の位置関係やサイズまでが明確に伝わる
■音が自然 スピーカーから音が出る感じではなく生の音に近く感じる
■人の声がリアル 人の声は本来1点からでるもの
■音離れが良い スピーカー周りに音がへばりつかない
■音の鮮度が高く音が寝ぼけない
マルチウエイ型スピーカーでどのようにしたら点音源に近い状態で音をだすことができるか見てゆきましょう。
(1)スピーカーユニットの数をできるだけへらす
最も点音源化に効果が高いのができるだけ利用するユニットの数を減らすことです。点音源的な優位度でいうと フルレンジ1発>2way>3way>・・・・となります。又スピーカーユニットの口径が小さいほうが点音源の効果を大きくします。ハイエンドのフロアタイプの大型SPより、小型のブックシェルフのほうが音が聞こえるケースはよくあることです。
(2)ユニット間の距離をできるだけ近づける。
スピーカーユニットの距離はできるだけ近づけたほうが点音源に近い出方をします。↓の写真のスピーカーは10m離れて聞いた場合はさほど変わらないかもしれませんが、50センチぐらいのニアフィールドで効くと音源が1点に集中している右のスピーカーのほうがまとまり良い音に聞こえます。
(3) 箱の形状を工夫して回折の悪影響を抑える
スピーカーユニットは通常バフルに取り付けますが、下の写真のようなスピーカーユニットから出た音はエンクロージャーの角で音が回り込みを起こしますがこの時に自然な音波でなくなります。この回り込み現象を「回折」とよびます。バフル面積を最小にすることで点音源の効果を最大限引き出すことができます。
これを防ぐには理想的には角がない球形ですが、球は難しい場合はバフル面積をできるだけ小さくして大きなR形状をとることでこの回折現象による原波形の悪化を抑えて点音源に近い出方をしてくれます。点音シリーズはこの部分に着目したエンクロージャーです。
過去に点音源型のバフル、面積にして8倍近い平面バフルの音を比較する実験を行ったことがあります(箱の容積はだいたい同じにしています)。結果分かったのはエンクロージャーを点音源化する効果が特に大きいのは、800Hz~5000Hzあたりの中高域帯域になります。これらの帯域は人の耳に大変敏感な帯域であるうえ意外に指向特性が広い帯域です。そのため音が前にも後ろにも回り込むため大きいサイズのバフルや角がある四角い箱は高域反射の影響がもろにでるのがわかりました。
クリヤな高域を得るために、中高域ユニットは球体のエンクロージャーにして反射影響を減らしウーファーは通常の箱型のものを採用しているB&W800シリーズの形状はとても理にかなった方式で、マルチウエイにおける点音源化をおしすすめていった結果の形状といえるでしょう。