Z-Bergamoラインナップ
Z1000-Bergamo/Z702-Bergamo
音工房Zとマークオーディオが開発した10センチオリジナルフルレンジユニットを採用。音工房Zのフルレンジ1発のフラッグシップモデル。
- 完成品
- 組み立てキット
Z-Bergamo 開発経緯1
マークフェンロンと音工房Z
音工房Zのホームページを長く見てくださっている方にはご存知かと思いますが、以前に Z600-Alpair7という機種を販売していました。こちらは、シングルバスレフのZ600シリーズの商品で完成品版Z600-Alpair7Sや側面をR形状にしたキットZ600-Alpair7Rなども販売させていただいておりました。
このAlpair7は2018年ごろに販売を終了したのと同じタイミングで弊社も商品販売を終了いたしました。次世代モデルとしPluvia7とAlpair7MSという商品に別れて販売されておりました。Pluvia7は非常にクオリティーが高く、 弊社でも販売時にテスト視聴を実施して Z600-Pluvia7として販売も検討を重ねておりました。
このPluvia7はシングルバスレフとして使うには素晴らしく良いのですが、 音工房低域にロードをかける方式で使うと全体のバランス的に中域から低域に膨らみすぎな感じになります。そこで、フィディリティムサウンドの中島様にお願いしてこのPluvia7をベースに音工房向きに改良を施したモデルを作ってもらえないか?とお願いしたところご快諾いただきました。(2019年の話)
Pluvia7のオーダーダンピング化は当初は実験で始めたもので商品化できるかは疑問でした。しかしオーバーダンピング化したユニットを製作してゆく過程でその音の良さから、弊社のフラッグシップであるZ1000のモデルとして採用できるという確信を得ました。Pluvia7のオーバーダンピングユニットの開発にはマークフェンロンも積極的に関わってくださいました。このページでは、Z1000-Bergamoの採用フルレンジユニット「Z-Bergamo」がどのような経緯で開発されたかの詳細を紹介しています。
■マークフェンロンについて
マークオーディオの代表マークフェンロン氏について書きたいと思います。私も二度ほど直接お会いしたことがありますが、真面目な方で大変な親日家の方です(車はスバルだそうです。) ↓は私が2011年に香港でマークと初めてあった時の写真です。
金属振動板がトレードマークであるマークオーディオはステレオ誌のムックで3年連続採用され日本のオーディオファンは皆が知る存在となりました。現在のマークオーディオのスピーカーユニットは日本のフィディリティムサウンド の中島代表との二人三脚によって生み出されたといっても過言ではありません。
イギリス人マークフェンロンは、 もともとメタルコーン設計の世界的権威 であるE.J.ジョーダン博士夫人と共にイギリスの有名なスピーカーメーカーで働いていたスピーカー設計エンジニアでした。ジョーダン博士が手掛けたメタルコーンの有名なスピーカーとしては「グッドマン」「ALR JORDAN」などがあります。オーディオ好きの方ならご存知の方も多いでしょう。
マークはイギリスで学んだ金属振動板 のエンジニアリングの技術をさらに深めるべく母国を離れ、香港に移住します。香港からすぐ近くに中国のスピーカーユニットの生産があるからだそうで、そこで日本のフィディリティムサウンドの中島代表と出会うことになります。フィディリティムサウンドの中島様は私と同じくオーディオは本職ではなく趣味で楽しまれていた方で、お仕事で香港や台湾を飛び回っていらっしゃる国際派のエリートビジネスマンでした。
中島様は日本のオーディオ技術者との広い人脈をお持ちで中国で仕事をしている複数の日本のスピーカー設計技術者にマークフェンロンを紹介しました。マークのドライバーにかける思いは非常に強く、日本の技術者のアドバイスによってマークのユニットは初期の頃から大幅に進化したそうです。
中島様いわく、現在のマークオーディオの ユニットは半分は日本人エンジニアの手によって改良されたものとのことです。少し話が脱線しますが、 この日本のエンジニアは業界では有名な方ばかりで、世界中の有名なスピーカーをOEMで設計されていた経歴の方とかです。この世界でプロの方と一緒にお仕事をさせていただき分かったのは、日本で有名な海外ブランドスピーカーは実は日本のメーカーや技術者が関わっていることがあまりに多いことです。
簡単にまとめるとマークオーディオのメタルコーンがE.J. ジョーダン博士のものをベースに、現在のものは日本の技術者によって大幅な改良が加えられたものだということです。
Z-Bergamo 開発経緯2
Alpair7とPluvia7の違い
音工房Zで2018年まで販売していた Alpair7と弊社のオリジナルモデルZ-Bergamoの原型となったPluvia7の違いについて書きます。↓2つのスピーカーを比較した写真をご覧ください。
まず外観上の違いである、フレームについてからです。マークオーディオというと金属振動板に注目しがちですが、もう一つの大きな特徴が樹脂を使ったフレームです。スピーカーのフレームは基本鉄を使うメーカーがほとんどですが、マークオーディオでは樹脂フレームを頑なに採用しつづけています。その最大の理由は金属固有の共振音を出さないからだそうです。
Alpair7とPluvia7のフレームの違いは同じ樹脂ですが、Alpair7はABS樹脂、Pluvia7はグラスファイバーを使っています。後者のほうが前者より5倍の強度があるそうで、そのためPluvia7のほうがバフル面に接するフランジ部分を極薄の設計が可能となったようです。
スピーカーのフランジ部分だけを木工加工で落とし込んで、バフルとユニットを平面に取り付ける方式をメーカーはよく採用しますが、そのような複雑な加工をしなくてもバフルに対してフラットに取り付けができるようにされたそうです。
■振動板とセンターキャップ
振動板は似ていまして写真ではほぼ同じに見えますが、コーン形状のカーブが若干異なります。
Alpair7よりか、Pluvia7のほうがコーンがより平面に近いカーブとなっているとのことです。写真ではちょっとわかりにくいですね。こうすることで高域の指向特性が改善するとのことです。マークの考え方としては振動板は平面に近づけるのが理想だが、強度的な問題を考慮して最終的なコーンカーブを決定されているようです。
マークオーディオのユニットは他社メーカーのものと比較すると、振動板はコーン形状でありながらコーンが浅く平面に近い設計なのが分かるかと思います。あと、見た目で一番の違いが分かる部分がセンターキャップの窪みです。これは振動板の強度を上げる意味で採用されているようで、高域特性がフラットになったそうです。
振動板の素材はアルミとマグネシウムの合金を使っていて、その比率は7:3程度でAlpair7もPluvia7も同じ配合比率とのことです。「マグネシウム」というと弊社のZ800-FW168HRのツィーターの素材ですが、金属的なピーク感を感じさせない音で高級ユニットに採用例が多い素材です。
■Alpair7とPluvia7の聴感の音の違い。適当なBHBS箱に入れてみる。
Alpair7とPluvia7を同じ容積、同じダクト定数のバスレフ箱に入れて音の比較をしました。
同一条件比較した際の違いとしては、Pluvia7のほうがダンピングが効いていて中低域から中域にかけて力強さ量感がありました。おそらく測定レベルで分かる大きな違いと思いますが、後日F特測定してブログに結果を載せたいと思います。
FostexのFEばかりを聞いていた10年前に初めてAlpair7を初めて聞いた時はシングルバスレフでも低域の量感に感動したものですが、最近はBHBSに慣れてしまっているのでシングルバスレフだと低域の伸びが足りなく感じます(笑)そこで、弊社の既存のBHBS箱であるZ1000-FE103Aの試作版の箱にユニットだけ入れて聞いてみました。
FOSTEXのFE103A用の箱ですと低域がブーミーすぎでした。共振周波数を下げないと難しいなと思い手持ちにあったダクトを絞ってみました。箱が大きいので当たり前ではありますが、30Hzの片鱗を感じさせる低域がでてきました。
もう少しユニットがハイアガリでダンピングがあったほうがよいとか、高域の広がりを良くしたいとか細かい改善をしたくなりました。遊びではじめた実験でしたが、、、この遊びがきっかでPluvia7の改良を作ってもらうことになるとはその時は思いもしませんでした。
Z-Bergamo 開発経緯3
SPユニット裏にマグネットを追加する実験
時系列が少し前後しますがマークオーディオにスピーカーユニットの特注依頼をする前に、弊社でPluvia7背面にスピーカーユニットにマグネットをつけオーバーダンピング化していた際のお話をします。この実験によりPluvia7を軽くオーバーダンピング化させたら凄いものができるという確信を得ることになります。開発経緯3と開発経緯4は自作でスピーカーを楽しまれている方にも参考になるかと思いますので参考にしてみてください。
■スピーカーユニットにマグネットをつけてQtsを下げる実験
Pluvia7を以前に制作したZ1000-FE103Aの試作の音道構造に入れるとミスマッチながらも、30Hzあたりまで聴感で感じる低域がでてきました。もともと低域がよく出るマークオーディオのユニットは弊社で作った箱でいいますと、 Z600シリーズのシングルバスレフ、もしくはZ601(V2)に入れたダブルバスレフぐらいの短い音道が合うかなという印象がありました。今回実験は試みとして、メタルコーンを使ったユニットをオーバーダンピング化してBHBS方式でローエンドを伸ばせないかということです。
自作スピーカーを長くやっている方の間では↓の写真のようにスピーカーユニットのマグネットに、 さらにマグネットを追加している写真を 見たことがある方も多いかと思います。
これは「キャンセルマグネット」と申しまして、もともとは防磁用のカバーと一緒に使って昔のブラウン管のテレビに悪影響を与えないことができます(Alpair7とPluvia7にもカバーとマグネットがついています)。それとは別の目的でスピーカーのボイスコイルに与える磁力を調整してTSパラメター自体を若干変更することも可能です。マグネット追加で音がどのように変わるか、どこまで変化させることができるかについて書きたいと思います。
■マグネット追加でどこがどう変わるか
この方法はスピーカー自作の上級者の方は試されたことがある人も多いかもしれません。これで音が変わるのか?単なるプラシボではないか?と思われる方もいるかもしれませんが、音はTSパラメーターを測定すると確実に変化することがわかります。
どこが変化するかというと低域のダンピング値であるQtsが変わります。Qtsが変わるということは当然低域の周波数特性が変化します。この後付けでのマグネット追加でQtsを変化させる方法はFOSTEXのエンジニアさんがスピーカーユニットを設計試作をされるときにも使われる方法とのことなので、プラシボのはずがありませんね(笑)この後付マグネットによるQtsを変える方法は、マグネットの片面をつけるか、もう一方の片面をつけるかで効果が変わります。
(A)Qtsが下がる=低域がでにくくなる
マグネットを近づけてゆくと最初反発し、さらに近づけてゆくと吸着する。
(B)Qtsが上がる=低域がでやすくなる
マグネットを近づけてゆくと反発せず吸着する。
つまり、追加のマグネットをどっち方向につけるかでQtsの数値が逆の方向に振れることになります。今回弊社が試したのはオーバーダンピング方向に音をもってゆきたかったので(A)です。この方法は設計後のスピーカーのパラメーターを変えるという意味では簡単ですし、取り付け・取り外しもできます。(ただし、メーカーの保証外になると思いますので試す方は自己責任でお願いします)
この数値の調整幅はそこまで大きく取ることはできませんで微調整程度になります。後述しますが、極端にマグネットをつけるとパラメーター自体は動きますが音のバランスは崩れることが多いです。FE103Nvにどんなに大きいマグネットをとりつけても、FE108EΣのようにすることはできないということです。
スピーカーのマグネットはボイスコイルが部分がマグネットの磁力の影響を最も受けます。そのためQtsを根本的に大きく変更したい場合はマグネットを厚くするか径を大きくして再設計するのが本来です。しかし、説明したきたようにマグネットの後ろに追加でマグネットをつけでも多少磁力が上がるのでQtsを多少は変えることができます。
後付マグネットの効果は電気的なもの以外にも、ユニットの重量を増すデッドマスのような効果も若干ですが期待できます。ただデッドマスというのは、箱の容積を減らす要因にもなるのでプラスとマイナスの効果が同時に起こるので必ずしもプラスの効果になるとは限りません。
TSパラメーターの測定は本格的なものは業務用のものが300万くらいで弊社でも導入したいのですがあまりに高く躊躇しています。簡易的な測定は弊社ではDAYTONAUDIOのDATS V3を使いました。PCのフリーソフトウエアでも測定できるようになっているようなのでいつかブログで記事にしたいと思います。これが分かると自身でどのくらいのマグネットを使えばQtsの数値がどれほど上がった(下がった)かが分かるようになります。
Z-Bergamo 開発経緯4
DATS V3でTSパラメーター測定
Pluvia7に複数のパターンのマグネットをTSパラメーターを測定できる機械で測定し、実際にスピーカーに入れて視聴します。その後、最も良かったパターンのパラメーターをフィディリティムサウンドさんに試作版の発注までのお話をします。
スピーカーや部屋の測定は10年前では考えられないほど優秀なソフトや機材がでてきました。DAYTONAUDIOのDATS V3もその1つです。業務用のTSパラメーターの測定装置は300万くらいしますから、それに比べれば精度は劣るでしょうが僅か2万円程度で購入できます。
こちらを使うと主要なTSパラメーターの測定が可能です。利用の仕方はいずれブログで紹介したいと思いますが拍子抜けするほど簡単です。ソフトウエアをPCにインストールして、端末からでている赤と黒のケーブルにユニットを裸のままつないでスタートボタンを押すとスィープ信号がでます。その後、重りを載せて、再度測定ボタンを押します。
測定結果がパソコン上にでてきます。 わかるパラメーターは、↓のものです。
Fs (F0)
Qts(Q0)
MMs(M0)
Cms
Vas
インピーダンス
FOSTEXさんのユニットやマークオーディオさんのユニットをいろいろ測定してみました。たしかに取説のTSパラメーターと数値は一致はしませんが、複数のユニットを測定すると相対的には近い値がでてきてくれます。弊社ではPluvia7用に合う箱を考えた時にもう少し低域がオーバーダンプ気味にしたく↓の写真のようなマグネットを購入しました。
このマグネットをPluvia7にいろいろなパターンでつけたり、外したりしてDATSV3で測定すれば実際にQtsがどのくらい変化するかがわかります。ユニットのパラメーターがわかると箱の設計の目安もつけやすくなりますのでご自身で自作スピーカーを楽しまれている方にはこのDATSV3はおすすめです。
購入したマグネットで様々なパターンを測定してエクセルの表に落とし込みました。測定を大きく2つの事がわかりました。
(1)マグネットの外径はユニットと同じものが一番効率が良い
マグネットのサイズは3つ用意しましたが、一番ダンピングを落としたのは、取り付けるユニットのサイズと近いものが一番効率的にQtsを下げることができる。
(2)マグネットの厚みを増すとQtsを大きく変えることができる。けど音のバランスは良くない。
実験をしてみたところ同じマグネットを1つ、2つ、3つ、4つと増やして測定してみましたが、4つぐらいまでつけるとQtsの値で1.5ぐらい下げることができました。それ以上はマグネットを追加しても変わりませんでした。このQtsの変化1.5という数値が大きいか小さいかは人によって考えが違うかと思いますが、私は想像より大きく変わるとおもいました。しかし、実際に音を聞いてみると極端にマグネットをつけたパターンは歪っぽい感じがしてあまり好ましい音にはなりませんで、実際の音のバランスも考慮すると1,2枚が限界かなという気がしました。
オーバーダンピング化したユニットを試作箱に入れてみる
オーバーダンピング化したユニットを以前のBHBSの試作箱に入れてききました(多少箱はPluvia用にいじっています。)。ノーマル版に比べて低域は引き締まり、見事にマッチしました。スピーカーユニットの調整は私は素人ですから、マークや中島さんのお力を借りることができればさらに凄いものになるのではないかと思いました。
一番最初にフィディリティムサウンドの中島さんにお願いした試作版は、現状のPluvia7のQtsを0.5下げたものと1.0下げた試作版を依頼しました。
Z-Bergamo 開発経緯5
2つの試作が到着
待つこと4ヶ月後ぐらいになりますが、フィディリティムサウンドの中島様よりPluvia7をベースにQtsを下げた2パターンの試作版のユニットが届きました。マグネットとボイスコイルから再設計して作っていただいたので、時間がかかったようです。
外観上は全くPluvia7と同じですが、音は比較して聞くとオーバーダンピングモデルのため高域が多く低域は制動が効いてひきしまっています。中島様いわく「バスレフで聞いてもこれならぎりぎりいけそうな音だね」とのことでした。
弊社で背面にマグネットをつけて視聴したユニットに比べて、音が繊細で表現力があがりました・特に高域がよくなった印象でした。2パターンの頂戴したスペックシートは写真右 です。Qtsの値はマークオーディオが測定したもので、Qts0.56(高Qts)とQts0.52(低Qts)です。ちなみに原型のオリジナルはQtsが0.59です。
■到着した2つの低QtsのPluvia7試作モデルを視聴
到着した2パターンにQtsを下げたモデルの写真が下です。外観はオリジナル品と全く同じです。そして、弊社でマグネットをつけ てQtsを落として一番音が良かったのが下です。
マークが新設計したモデルのほうがどちらも高域が繊細で表現力が高く皮が一枚向けたような透明感がありました。トータルでは完全にマークが新設計したユニットのほうが上でしたが、ミッドバスについてだけは弊社でマグネットを取り付けてQtsを落としたもののほうが芯があり良いかなという印象でした。このユニットの1回目の試作を受け取った時点で10センチのフラッグシップモデルとして採用するという気持ちは固まりました。
様々な箱にいれて、2つの試作版を視聴してみました。どちらの音もクオリティーが高く捨てがたく、2つを選択できるようにしようかなと一瞬考えました。しかし、現実的には2つを持つのは難しいので、1つに絞ろうと思います。シングルバスレフで考えると高Qts、BHBSで考えると低Qtsなのですが、、高Qtsのほうが良いなと思える部分もあり簡単にどちらでゆくか決めることができなくなってしまいました。
今回2つの試作ユニットを依頼する際に中島様を通じてマークフェンロンにQtsを2パターンに下げたものを作って欲しいとお願いしましたが、当初マークフェンロンはpluvia7のQtsを下げたものを作ることに否定的だったようです。Pluvia7はAlpair7からの系譜でマークが長年研究をして生み出したものですから、それを勝手に仕様変更されることはマークの職人魂から納得がいかないのは当然と言えば当然です。中島様にこちらの箱についての考えを伝えてもらったところ、マークは逆に開発に本腰を入れて作ってくれたとのことです。音工房との長年の取引もプラスにはたらいてくれたと思います。
この2つの試作ユニットはオーダーしてから届くまでに4ヶ月近くかかりましたが、単純にスペック上のQtsを下げるだけでなく音を出して詰めてくださったとのことです。どうりでどちらも音が良いわけで、単に背面にマグネットをのせただけとは全く違います。1ヶ月近く迷いましたが、弊社が作ろうとしている箱には低いQtsモデルのほうが合うという理由が一番大きいのですが、「低Qts」をベースに最終版を作ってもらうことにしました。
Z-Bergamo 開発経緯6
フィディリティムサウンドで打ち合わせ
フィディリティムサウンドの中島様宅はこれまでお伺いしたことがなかったのですが、今回のコラボモデルの仕様決定の打ち合わせを兼ねて初めてお邪魔させていただきました。1回目の試作をベースに、弊社の要望をお伝えして本試作を作る流れです。
到着しまして、まずは中島様のシステムを視聴させていただきました。いつも聞いているマークオーディオの音です。どのスピーカーが鳴っているか分からないブラインドテストのような状況で、
「どのスピーカーが鳴ってるとおもいますか?」と、中島さんに質問されました。
「一番大きい奥のスピーカーが鳴っていると思いますと」答えましたが、実際は手前の8センチが鳴っていました。
マークオーディオのユニットごとの低域は分かっているつもりでしたが、、 思い切り外してしまいました(笑)。
「ほとんどの方が分からないですから、 大丈夫ですよ。は、は、は。」
と言われましたが、マークのユニットを長年使っている開発者的な立場の私としては少々恥ずかしい思いです。
結構長く視聴させていただき、お昼ご飯を近くの蕎麦屋さんでごちそうになり、 午後から本題のコラボモデルの打ち合わせをしました。2つのQtsを作ってもらったうち、「低いQts」をベースに製作をお願いする点と、振動板の色を変えて作ってもらう こと、その他少々細かいお願いをしました。
あと、ダメ元で現行の低Qtsのユニットと同じ高域で、マグネットをむき出しの外付け仕様にできないか?と聞いてみました。弊社で実験した外付けマグネットのほうが中低域が良かったので、、この部分をミックスできたら最強のユニットができ上がると思っていたのです。
ただ、そうなるとまた最初からの設計になるだろうし、マークが気合を入れて作ってくれた試作版にケチをつけることにもな る気がして・・少し悪い気がしたのです。
中島様「マークに聞いてみます・・・」
Z-Bergamo 開発経緯7
マークフェンロンからの回答
2ヶ月後に中島さんから電話がきまして、前回の弊社の要望だった、マグネット外付けによるQts調整はマークフェンロンから「OK」の回答をいただきました。技術的な細かいことは教えてもらえなかったのですが、、、マークは2018年にステレオ誌でOMMF519を出した時にもマグネットを外付にして調整をしたことがあってノウハウの蓄積があるようでした。
中島様の話では、マグネット外付けの場合に弊社の希望のQtsと完全に一致させることはできないが近い値にはもってゆけそうだという点。あと、Qtsの数値を下げることだけに意識がいってしまうと、全体の音のバランスが崩れることがあるので最後の音の調整はマークに一任してほしいとのことでした。ここまで親身になってユニットの開発に協力してくれるとは思ってもいなかったので、本当に感謝しかありません マークが本気を出して作ってくれたユニット。到着が待ち遠しくて仕方ありません。
今回のマークオーディオとのコラボモデルですが、当初はマークオーディオの名前は出さずに「音工房Zの10センチフルレンジ」という形でいこうかと考えていました。中島さん的には、音工房のオリジナルモデルでも、マークとのコラボモデルどっちでも大丈夫ですよと言ってもらっていました。
オーバーダンピングの音決めに関してはマークに協力してもらった部分が大きいですし、そもそもこのメタル振動板は自作派の人にはすぐに「マークオーディオね」 って分かってしまうと思いますので(笑)コラボモデルという形でださせていただくことにいたしました。
ユニットの名称ですが、
毎度カッコイイと思われるイタリアの都市名から名前をもらいまして
「Z-Bergamo(ベルガモ)」
といたしました。
■ユニットが届く前に箱を3パターン用意しておきました。
今回のZ-Bergamoは試作版でいろんなエンクロージャーに入れてきましたが、Z702の音道の短いBHBSで今のところいこうと思っています。しかし、ダブルバスレフのZ701のほうが人によっては合うというケースは普通に考えられますし、、、ちょっとありえないことではあるのです が音道の長いZ703も合うかもしれません。(音工房のフルレンジ箱一覧をご覧ください。)念のため異なる音道バターンでどうなるかも予めユニットが届く前に準備しておくことにしました。箱の設計の初期段階では音の傾向を大きく違うものを複数用意して方向性を決め、それから微調整を徹底したいからです。
これまでに試作で作ったものもZ-Bergamo用にダクト等を変えています。
Z-Bergamo 開発経緯8
完成
中島様の家で最終仕様を決めてから2ヶ月後になりますが、弊社の指定で作ってもらった本試作ユニットが届きましたー!
振動板は黒く見えますが、気持ちだけ白が入っています。黒に限りなく近いグレーでしてこっちのほうが金属の質感がでるのではないかということをお勧めいただいて決定しました。予想していた通りの綺麗なしあがりです。お願いした通りのマグネットむき出しのダブル仕様です。
背面のシールだけは私が考えたので少しセンスがないかもですね(笑)中島様の話ではマグネットをシングルでQtsを調整された時に、振動系とかまで手をだしていろいろ変更して2パターンのサンプルを作っていただきました。今回の本制作でもいろいろ実験をして決めていただいたそうですが、今回はPluvia7の振動系はそのままにもどして背面のマグネットを複数パターン用意して音決めをしてくださったそうです。
最初の試作でいろいろやっていただいた苦労が無駄になってしまったのでは?と思いましたが音のバランスを考えて最終的に決めてくださったそうです。
「もし、初回の試作のほうが音がよければそちらを採用でも大丈夫ですよ」
と大変ありがたいお言葉を頂戴しておりました。さっそく箱に入れて聴いてみます。
■作っておいた試作箱にいれての初音出し
一聴して予想を大きく上回るものを作ってくれたのが分かります!!
こちらの都合で最初に設計してもらったものを取りやめてマグネットを外付けにしたものを作ってもらうことにしましたが、ダメ元で聞いてみてよかったです。私が希望する、低域の芯の強さと高域の高解像度を両立し、弊社のフルレンジフラッグシプであるZ1000として完全なものができました。最初に試作していただいたものではなく、今回マグネット外付けタイプで作り直してもらったほうを本採用することに決めまして、ユニットの注文を入れました。
後日、偶然弊社の工場に立ち寄っていただいたブログハイエンド自作スピーカーの石田様にも聞いていただき外観と音に良い評価をいただけたので自信がさらに深まりました。
ここからは音工房Zのメインワークである箱作りにかかります。
ラインナップ
Z1000-Bergamo/Z702-Bergamo
音工房Zとマークオーディオが開発した10センチオリジナルフルレンジユニットを採用。音工房ZのBHBSフラッグシップモデル。
- 完成品
- 組み立てキット