長岡式バックロードからBHBSへ
(2014年~)
BHBSエンクロージャーとはバックロードホーン・バスレフを略した名称です。石田健一さんというスピーカービルダーが始められた方式です。「ブログハイエンド自作スピーカー」というブログで情報発信をされています。石田さんはおそらく日本で最も沢山のスピーカーを自作されている方で、開業前から懇意にしていただいています。BHBSエンクロージャーはステレオ誌の自作スピーカーコンテストで3連覇を達成されています。
BHBSの構造と、通常のバックロードホーンの構造の違いをイラストで解説します。通常のバックロードホーンはスピーカーユニットの背面内部の迷路がだんだんと広がるホーン構造のようになっていまして最後の音の開口部分がホーンの出口で最大の開口となっています。一方のBHBS構造は、途中までは同じですが最後のホーンの開口部分にバスレフダクトを取り付けているのが特徴です。
[画像1] FE208-Sol
[画像2] FE108EΣ
このBHBS構造は石田さんがスーパースワンのホーンの出口をタオルを詰めて調整しているときに偶然試していたのがうまくいったのがきっかけではじめたとのことですが、「ホーンは広がって大きくなるもの」という固定概念が頭にある方には強い違和感を感じるかもしれません。バックロードホーンを単純なホーンの動作だけで考えると開口部分を絞るのはたしかにNGでしかないのですが、バックロードホーンは「バスレフ、共鳴、迷路、ホーン等」が複雑にミックスされたものと考えるとホーンの開口の口を絞ることには何ら問題はなく、正しく設計されたBHBSは長岡式バックロードの欠点(低域遅れと中域のパイプ共鳴音)の大半を克服していることがわかりました。
音工房Zでは2014年頃から販売するフルレンジ1発のスピーカーで内部音道を有するものはBHBSのスタイルでの設計が基本になりました。BHBSの箱は従来型のバックロードのデメリットを単に克服しているだけではなく、沢山のメリットがありますので列挙してみます。
●従来型バックロードよりもローエンドを大きく伸ばすことができる。
●シングルバスレフより、音が開放的。詰まった感じがしない。
●シングルバスレフではダクトからの高域漏れを防ぐために吸音材を多く使うが、BHBSは内部音道で高域は減衰されるので最小限の利用ですむ。
●ダクトポートによる調整が設計時点、設計終了後も簡単に行える。利用される方の好みや視聴環境に合わせた調整を容易に行うことができる。
●BHBSの音道はシンプルで短いものが多いので自作派にとっては組み立てが楽。パーツ点数もすくないので経済的。デザイン上のバランスも取りやすい。
●スピーカーユニットをさほど選ばない。従来型ではオーバーダンピングユニットでないと鳴らすのが難しいが、BHBSでは設計次第で幅広いユニットを使うことができる。(個人的には少しだけオーバーダンピングしたものを利用することが多い)
それではBHBSにデメリットはないのでしょうか?
BHBSのデメリットは「●低域から中域にかけてのディップが発生」すること。それを回避しようとして音道を長くしすぎると「●低域の遅れ」が発生することです。この2つの欠点は完全に消すことはできず、スピーカーユニットに合わせて音道の長さ調整や、目立たない帯域にディップを移動する手法を現在とっています。どんなエンクロージャー形式にも長所と短所があるものですが、BHBSこそが最もフルレンジ1発を理想的に鳴らすことができる形式だと私は考えております。